読書記録「松本大の資本市場立国論」
著者:松本大
沈みゆく日本が日本のアイデンティティを残すためには,海外から日本への投資を促す仕組みづくりが必要である.
現状
少子高齢化の進行する日本のGDPは長期的に見て下がることは必然.世界における経済的な重要度の低下はすなわち日本の国力の低下であり,国力の低下は世界から見た国としての優先度が下落を意味し,そうするとアメリカなどの同盟国が日本を守る価値が下がり,中国やロシア,北朝鮮といった脅威により晒されることになる.さらに,国として全体的に貧しくなると文化の育成や維持といったことへお金が回らず国のアイデンティティとしての文化が廃れなくなってしまう.そして治安や衛生環境が悪くなり,日本人が誇りに思える日本の部分がなくなってしまう.日本の治安や衛生は大して自慢できるほどのものでもないが..
少子高齢化という敗北シナリオが日本人の意識にしっかりと根付いてしまっており,日本で暮らす人々の「将来はもっといい暮らしができる」という未来への期待や希望を奪っている.
希望
しかしまだなんとかするための時間はある.少子高齢化は必然にしても数十年後にはこれが回復していることを前提として,それまで日本を持たせる方法はある(前提とすれば,だが..).日本はフローはダメでもストックはたくさんある.そのストックを活用するのだ.
日本復活シナリオ
日本の経済回復シナリオとして,まずは日本の預金と世界の投資家からの投資を呼び込む.そうすることで企業が投資資金を用いてリスクを取って新規事業を行い,価格競争で優位を取ろうとするだけの現状から脱却することができる.そしてより企業をあげることができるようになりそのような企業の株価が上がる.一方それができない企業は株価が下がる.企業価値が低い企業はM&Aをされ淘汰されることで,買収先の企業がさらに付加価値を生む材料となり,相乗効果が生まれる.さらに人材の最適配置も進む.そしてこのような資本主義として望ましいアメリカのような循環が生まれれば,海外の投資家がPBR1倍を切っている企業ばかりの日本に対して期待と注目の視線を向ける.
2024年から新NISAが開始され,日本国民の預金が大きく投資に向けられると予想されるが,それが米国にむかえば,日本企業の事業への投資資金が増えないだけでなく,円が売られることを通して円安がさらに進行する.日本企業が投資対象として魅力的になることが重要である.
日本への投資における大部分が海外投資家であることを考慮すると,海外投資家が日本企業へ投資を検討するファネルに注目して,そこからボトルネックを解消していく必要がある.
海外投資家が日本へ投資をしづらい理由の1つとしては資料が国際基準かつ英語で書かれていない点である.一部企業は英語でも資料を作成しているが,それ以外の企業は作成していない.これでは投資するために会社を知りたくても知ることができない.著者は経営数値の部分のみは国際会計基準に合わせた英語の資料を作成することで,海外投資家に日本企業を見てもらうチャンスが増えるのではないかと提案している.
そして,.