彼がくれた記憶の欠片という宝物。
あなたは誰?
予想だにしていなかった衝撃の言葉。
俺の頭の中は真っ白に。
俺の彼女である与田祐希は
交通事故で頭部を激しく強打。
脳の損傷が激しく重度の外傷性健忘、
さらに詳しく説明すると、脳挫傷による逆行性健忘症の診断。
俺は理解ができなかった。
俺の名前は?俺と祐希、2人でつくってきた思い出は?
彼女の記憶からは全てが零れ落ちてしまった。
祐希:あなたは誰?
〇〇:う...嘘だろ...
〇〇:嘘だと言ってくれよ...
祐希:何故あなたは泣いてるの?
〇〇:祐希!本当に俺のことを覚えていないのか!?
祐希:何故私の名前を知っているの?
〇〇:もういい...。
俺は病室から飛び出してしまった。
ドラマでしか観たことないような事の展開。
その現実を受け入れるのには時間が必要だった。
いや、幾ら時間があろうと受け入れられなかった。
自分は健忘症について情報を漁りまくった。
健忘症には複数種類がある。
その中で俺の目の前に現れた唯一の希望の道標。
そう。逆行性健忘症は治るものだという事だ。
〇〇:どうやって祐希を助ければ...
〇〇:そうだ!
祐希:〇〇君だっけ?今日も来てくれたんだ。
〇〇:う...うん。
祐希:どうしたの?
〇〇:そろそろ退院でしょ?
祐希:うん!!
〇〇:祐希が退院したらさ、俺と祐希の思い出の場所に一緒に行きたいなって思ってさ。
祐希:〇〇君との思い出の場所?
〇〇:うん。
〇〇:俺と祐希は付き合ってたんだよ。
祐希:そうなの!?
〇〇:だから2人の思い出の場所に一緒に行く事で、記憶を取り戻せるんじゃないかなって思って。
祐希:いいね!
〇〇:一緒に行ってくれる?
祐希:行きたいっ!!
〇〇:良かった。
俺は祐希の記憶を絶対取り戻せると思っていた。
祐希の記憶を取り戻せる人は俺しかいないと思っていた。
退院してしばらくし、2人の約束の日...。
祐希:〇〇君!!
〇〇:祐希!ごめん少し遅れちゃって。
祐希:大丈夫だよ!そんな待ってないし。
〇〇:早速行こっか!
祐希:うん!!
最初の場所に向かう途中...
祐希:〇〇君?
〇〇:どうしたの?
祐希:私と〇〇君ってどのくらい付き合ってるの?
〇〇:もうすぐ半年かな。
祐希:そんなに!?
〇〇:うん。
〇〇:祐希はクラスの男子から人気だからものすごく羨ましがられたよ笑
祐希:そうだったんだ笑
祐希:〇〇君はまだ私のこと好き?
祐希:私の記憶なくなっちゃっても好きでいてくれる?
〇〇:当たり前だよ。
〇〇:嫌いになる要素がないだろ。
〇〇:ずっと好きだよ。
祐希:嬉しい。ありがとう。
〇〇:そろそろ着くよ!
祐希:ここは神社?
〇〇:うん。
〇〇:よく2人で願い事をするために来てたんだよ。
祐希:そうなんだ。
〇〇:お願いしたいこともあるし、思い出の場所だから。
2人はお参りをした。
祐希:(私の記憶が戻りますように、そして2人ともが幸せでいられますように。
〇〇:(祐希の記憶が戻りますように、そして2人が幸せな生活を送れますように。
俺は今、2人の願いが通じ合った気がした。
〇〇:(絶対に祐希の記憶を取り戻してみせる。
祐希:〇〇君はなんてお願いしたの?
〇〇:きっと祐希と同じだよ。
〇〇:次のところ行こっか。
祐希:うん。
少し歩いて...
祐希:今日は何ヶ所行くの?
〇〇:まだ祐希も退院したてで体力的にもきついと思うから、次が最後かな。
〇〇:思い出の場所はまだいっぱいあるから、何回かに分けて行こうかなって。
祐希:分かった。
さらに歩いて...
〇〇:着いた。
祐希:ここ?
〇〇:うん。
〇〇:ここは俺が祐希に告白したところ。
祐希:そうなんだ!
〇〇:うん。
〇〇:ドキドキしながら祐希に告白した記憶がある笑
〇〇:絶対にフラれると思ったからさ笑
〇〇:付き合い始めてからもここに何回も来てたんだよ2人で。
祐希:確かにいい場所だね!
〇〇:景色もいいし、何より人がほとんど来ないから2人だけの秘密の場所みたいになってて、俺は大好きな場所なんだよね。
祐希:私も多分好きだったと思う。
〇〇:祐希も好きだって言ってたね。
祐希:やっぱり笑
数十分後...
〇〇:そろそろ帰るか...。
祐希:うん。
祐希:ありがとう!今日は!
〇〇:こちらこそ!
2人は途中まで一緒に帰っていた。
祐希:いてて...
祐希:ここは...どこ?
祐希:〇〇は?
看護師:与田さん!目を覚ましたんですね!
祐希:〇〇は!〇〇はどこにいるんですか?
看護師:〇〇さんは...
亡くなりました。
半年後...
祐希:〇〇...私...記憶取り戻したよ...。
祐希:〇〇が遺した大切な宝物ようやく見つけたよ。
祐希:〇〇。ずっと大好きだよ。
彼がくれた記憶の欠片という宝物。
end
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