フィアナ伝説:フィンと木の男

かつてフィアナ騎士団がシュア川の土手沿いのバダヴァルという場所にいた時のことだが、ビルゲの子孫ウア・ビルゲのクルドゥブという者がフェヴィンの平野の妖精塚から這い出て、フィアナ騎士団の食べ物を持ち去って行った。そしてこのようなことが三日三晩続いた。しかしついに三度目にはフィンが気づいて、フェヴィンの妖精塚にクルドゥブよりも先に着いた。彼は妖精塚に入ろうとした時にフィンに捕まってしまい、向こう側に倒れ込んだ。フィンが手を引っ込めようとした時に汲みだされたばかりの滴る器を持つ女が塚の中から出てきてばったりと出会った。彼女は扉を勢いよく閉めたので、フィンは指を支柱と戸の間に挟んでしまった。彼が口の中に指を入れて再び出し、輝く智慧の詩イヴァス・フォロスナを唱えて言った。(以下訳出不能)

それから暫くの時が過ぎて、フィアナ騎士団はデーシ族の領地内の漁師の砦ドゥン・イアスカハから捕虜となった女性を連れ去った。美しい乙女が彼らに奪われたのだ。フィンはその女性を自分のものにしたいと思った。しかし彼女はフィアナ騎士団に仕えていたウア・ダグレダグレの孫の息子のデルグ・コラという若者を心に決めていた。なぜなら彼が次のようなことをしていたからだった。彼らが調理している間にその若者は炉辺を飛び越して行ったり来たりしていたのだ。乙女はそのような理由で彼を愛した。
ある日のこと、彼女は彼に一緒に来て臥所を共にしましょうと言った。しかしデルグ・コラはフィンのために彼女を受け入れなかった。そこで彼女はフィンを彼と仲たがいするようにそそのかした。
「力ずくで彼を攻撃しましょう」
すぐさまフィンは彼に言った。
「ここから出て行き、私の視界に入るな。三日三晩の猶予が設けられるが、その後は私に気を付けることだ」
その後、デルグ・コラは流浪して森の中に棲みつき、信じられないだろうが素早さのあまり鹿のスネを踏んで歩き回るようになった。
ある日のこと、フィンが森の中で彼を探していると木の上にいる男を見つけた。彼は右肩にクロウタドリを載せ、左手には水で満たされた白銅の器を持ち、その中には驚きやすいマスがいた。そして木の根元には鹿がいた。彼は次のようなことをしていた。木の実を割って実の半分を右肩に載せているクロウタドリにやって残りを自分が食べ、左手の銅の器の中から林檎を取り出して半分に分けると木の根元にいる鹿に放り投げて残りを自分が食べた。そして手に持っていた器から一口を飲み、彼は鱒と鹿とクロウタドリで分け合って飲んだ。
それからフィンの従者たちは、木の上にいる男が誰なのかフィンに質問した。なぜなら、彼らには身に着けている頭巾で隠れている男のことがわからなかったからだった。
そしてフィンは口の中に親指を入れて再び出し、輝く智慧の詩イヴァス・フォロスナを唱えて言った。
「木の上にいるのはウア・ダグレダグレの孫の息子のデルグ・コラだ」

脚注

フェヴィンの平野
カシェルからクロンメルの間に広がる平野の古称。

クルドゥブ
フィンの敵対者。

漁師の砦ドゥン・イアスカハ
現在のケア。アイルランド語ではCathair Dún Iascaighという。これが英語ではCahir/ケアとなる。

信じられないだろうが
ラテン語による注釈。

出典

[ed.] [tr.] Meyer, Kuno [ed. and tr.], “Finn and the man in the tree”, Revue Celtique 25 (1904): 344–349.



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