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貴石奇譚

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赤いリボン

サンタマリアに来て数日がたった。年季の入った寝具は、私が腰掛けただけで微かに軋む音を立てた。視界に入った木製の机の上には、赤いトワレの小瓶と、書きかけた手紙がきれいにそろえておかれていた。
私は、5日ほど前にサンタマリアを訪れた。この地に腰を据えるために訪れたのはいいものの、何も知らないよそ者にすぐに家が見つかるわけはなく、今は大通りの端にあるホテルを仮住まいにしている。清潔なシーツのかかっている

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サンタマリア

 まっすぐ続く水路を、白い小舟が流れてゆく。季節はたしか夏だった。

 私はふるびた窓をなれた手つきで開けた。ぼうっと窓の外を眺めていると、ひびきのよいピアノの音が、ひらりと部屋に入り込んだ。陽の光まぶしさに、私は、目を細めた。
 サンタマリアの風景は、いつだって嘘のようにうつくしい。私はもうずっとここで暮らしているのだが、それでもいつでも新鮮なおどろきを感じる、そんなうつくしさだ。私はこの街のふ

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夜の砂糖づけ

「ああ、もう二時ですか」

私は、彼の声で急に現実に連れ戻された。左手には彼のヴァイオリンに添えられていて、彼は私の指先に、しんとした視線を向けていた。暖炉が音を立てて暖かい光をほの暗い部屋に灯していた。

「す、すみません。知らない間に・・・・・・」

「いいえ、いいですよ。私がマリーに頼んだのですから」

暖炉の火を反射する彼の目は不意に細められた。私はなんだか申し訳なく感じてしまい座っている

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