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青海かなえ
2019年8月15日 05:27
姉がいなくなって、五年目の夏だった。 その日、私は朝から姉の部屋の掃除をしていた。細く開けた窓から、ぬるい風が滑り込んでくる。小花柄のカーテンが視界の端でかすかに揺れていた。 姉の部屋は、五年前からずっとそのままの状態で残されていた。勉強机に伏せられている文庫本や、棚に飾られている私と姉が映った写真も、あの日からなにも変わっていない。しかし、うすく積もった埃が、けして短くない時間を感じさ