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【6】#かんたんなアンケートと300字で勝手に本をおすすめする 永井宏 『ロマンティックに生きようと決めた理由』

かんたんなアンケート(年齢や性別、好きな色など)と300字の文章を書いてもらって、それを読んで独断と偏見で本をオススメする、という連載をやっています。


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【#8】23歳・女性・学生と社会人の間

好きな映画:はじまりのうた
好きな作家:森見登美彦さん
好きな色 :オレンジ
最近興味があること:喫茶店、ひとんちのインテリア、和菓子

私の友人には言葉を大切にする人がとても多い。いまの感情をぎゅぎゅっとまるごと詰め込んだ文章を書きたいときは感情を掬うと云うし、ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字、一字一句それでなくていけないものなどないのです。

私も文章の字面や読み易さにはとても興味がありますが、彼女たちの世界観や文書を読むとすごく、好きで、すてきで、愛おしいなあと感じるが、それと同時に羨望や嫉妬にも似たような気持ちがこころに浮かびます。

けれど最近の私は、やっと、わたしの感情は私のものでしかなくて尊いものなのだと自分の感情や生み出す文章たちの事をとてもいとおしく感じられるようになりました。だから伝えたいキモチは文章としてちゃんと世の中に産み落としてあげたい。

おすすめしたい本:永井宏『ロマンティックに生きようと決めた理由

「わたしの感情は私のものでしかなくて尊いものなのだと自分の感情や生み出す文章たちの事をとてもいとおしく感じられるようになりました。だから伝えたいキモチは文章としてちゃんと世の中に産み落としてあげたい。」

文章の最後のこの部分を読んだとき、なんて素敵な感性を持つ方なんだろう、と思いました。そして、この文章を読んだときに真っ先に思い出したのが、永井宏さんの『ロマンティックに生きようと決めた理由』という本でした。

永井宏さんは、雑誌「BRUTUS」の編集なども手がけられていた美術作家の方。この本は、永井さんが「生活の中のアート」──つまり、「誰でも生活の中に自分なりの作品を見出すことができる」という思想を大切にしながら活動されていた時期に作られた一冊です。

それまでの生き方の中で見つけてきたもの、見つめたもの、そして現在のあり方などを、それぞれが普段の生活という視点で語ることで、個々に形成してきたオリジナルなスタイルを表していけるのではないかと考えました。(中略)

この本で語ってくれた人たちの誰もが特別なわけではなく、違いがあるとすれば、そうした視線に自分自身気がついているかどうかの問題だと思っています。もしこの本の中に共感できる人たちを見つけることができたら、自分の視線の先にあるものを、みんなと同じように改めて見つめ直してみるということを試みてください。きっと、自分の信じられるものをそこに発見することができると思います。そしてそれがこの本を作ってみたいと思った理由です。

この本では、11人の著者の方々が、それぞれ自由な形式で「ロマンティックに生きようと決めた理由」について文章を綴っています。コラムを書く人、詩を書く人、人生で心動かされた歌詞や言葉たちを集めて載せる人──。

そのどれもが、私の感情は私のものでしかない、私にしか書けない文章がある、ということを切に感じさせてくれるものたちです。はじめて読んだとき、「人の感情に入り込む」とはこういうことなのか、と感じたことを、今でもありありと覚えています。

この世のものとは思えないほど美しいものや不思議なものに出会うことがあるけれど、それは大抵この世のものだった。

例えば横顔。夜の海に落ちる雷。初夏の雨の中、水溜まりに沈んで、それから、沈まないで顔を出している庭の雑草。空に浮かんで光っていた丸い銀色。一度にいくつもいくつも出ていた虹。夜空の上で飛行機から見た星☆☆☆と永遠に続く暗闇。

(ほうろう/矢野顕子)
ふらり、そのあたりへ出かける時はなるべく手ぶらで。帰り道は何か両手で堤げてくるかもしれないし、たまには人の荷物を持ったりするかもしれないし。
突然、キラキラした光に包まれて、泣きたくなる程、恐ろしい幸福感に襲われるときがある。

「思い込みの激しい奴は伸びる」と言われた。


「本の中に共感できる人たちを見つけることができたら、自分の視線の先にあるものを、みんなと同じように改めて見つめ直してみるということを試みてください」──。

前書きにそう書いてあるように、回答者さんにもぜひ、この本の中から共感する文章を見つけて、自分の感情を見つめ直し、そうやって生み出した文章たちのことを、もっといとおしく感じられるようになればいいなと、そう思います。

夏、公園の木陰でピクニックでもしながら、ぱらぱらと読むのにもってこいな一冊です。ぜひ、ご興味があれば読んでみてください。

ちなみにこの本との出会いは、駒大前にある私の大好きな本屋さん「スノウショベリング」。ふと本棚を眺めていると、とてもきれいな装丁と、とてもきれいなタイトルに心が動かされて購入しました。ああ、ひさしぶりに、スノウショベリングに行きたい。

ありがとうございます。ちょっと疲れた日にちょっといいビールを買おうと思います。