【剣闘小説】万聖夜、そして吹かれるギャラルホルン
パァーン!レッキングボールじみた拳がUFOキャッチャー筐体を破壊した。
「ふっほっほほぉ~」
少年みたいに目を輝かせるヘラクレスはUFOキャッチャーの中にあるお菓子類をかっさらう。きのこの山とたけのこの里を箱ごと嚙みついて、歯で袋を引きちぎってワイルドに開封し、幽鬼の口に落ちていく。山と里は仲良く幽鬼の胃の中で滅び、長年の戦争は幕を閉じた。
「んっんん~うめぇ~~!」
同じ要領で次々とUFOキャッチャーを割り、ビスコ、パイの実、プリングルズ、ベビースター、OREO、Laysを次々と小林尊が全盛期ごとくのスピートで口に放り込み、モンスターエネジーで流し込む。さらにはじゃがりこのカップにコアラのマーチを入れ、マックスコーヒーを注いてカロリー爆弾めいた即席シリアルを作成。
「これずっとやりたかったんもんよォ〜〜〜!」
なんたる悪食か!通常の人間ならばとっくに血管が詰まったはずの過量糖類摂取だが、幽鬼であるワイルドハント達は己の存在を維持するために必要なエネルギー以外はエアコンの廃熱のように体外に排出されて地球温暖化が進む。奴らはいくら食べても太ることなくムキムキマッチョマンやマッチョレディのままだ。羨ましいものよ。
一方、ドラゴンボールヒーローズに興じていたソーは突如に怒りだした。
「我を愚弄するかァーー!!」
パァーン!レッキングボールじみた拳でデータカードダス筐体のハッチを殴って破壊。ひしゃけたハッチを引きちぎり、手を突っ込んでスロットからカードの束をもぎ取る。ボワィーン!ボワィーン!ボワィーン!セフティーモードに入ったデータカードダス筐体は警報音を発し、画面にWARININGの文字が浮かんだ。
「おいいきなりなんだいむしゃむしゃキレててよぉむしゃむしゃなんかあったむしゃ?」
ソーの様子が気になるヘラクレスはカロリー爆弾シリアルを咀嚼しながら問う。
「これを見てくれ」
ソーはカードをめくる。グルド、五星龍、ブイブイ、ボタモ、人造人間15号……レアリティが低いだけでなくキャラの魅力も低いカードばかりだ。あまりにもクソ過ぎる排出結果にヘラクレスも思わず頭を左右に振る。
「ワオ……こいつはひどい」
「だろぉ?あの売女め……きっと彼奴が筐体に細工しやがった!我慢ならん……我慢ならんぞッ!」
怒れるソーはエネルギーが高まり、体表に電流が走る!周囲の空気電気が充満して、それに触れたデータカードダス筐体が誤作動を起こし、画面にノイズが走り、排出口からカードやディスクがダム放水のごとく湧き出る!もちろん全部低リアリティ!椅子を蹴って、ソーは立ち上がる。
「クレームしてくるッ!」
「クレームって、どうやって?クソ年増はあのクソ狭そうな部屋に入ったぞ?」
「ならばドアを破って引きずり出すしかなかろう!」
「本気か?そんなことしたら格が損じまうぞ?」
「黙れヘラクレス!オーディンの息子、アスガルドの王子にして戦神である我がコケにされたままだと男が廃るわッ!」
「ほーん。そこまで言うなら止めないけどよぉ」
スタッフルームの前に立つソー。青白いで電光を帯びた手を伸ばし、ドアノブをちぎれんとするその時ーー
DOOOOOM!!!
アルミ合金製のドアが爆発的にで弾き飛んでソーにぶつかる!
「どぁっ!?」
ソーはドアの部を握ったままで飛ばされて、ドアとともに向こう側の壁に叩きつかれて壁にめりこんだ。
「やっべ、やりすぎちった」
スタッフルームの中からかすれた聞こえた。ひとりの女が出てきた。
「えっ、だれ?」
ヘラクレスはシリアルを置いて尋ねた。友人の安否より目の前の新手が気になるようだ。
「ああ、あたしか?あたしの名はデケイティアス」
と亜麻色髪とルビー色の目を持つ女が答えた……いや待て、亜麻色髪とルビー色の目だと?その特徴は前回登場した五色かさねと似てはいるが、何かが違う。いや結構違う!なにしろ人体筋肉の彫り込むを施したローマ式胸当てに、革のバトルスガートとサンダル、頭は真鍮の月桂冠を戴き、左腕は紫と黄、右腕はピンクとブルーの宝石を嵌めた二対の腕輪を付けている、さながら古代ローマ戦士じみた格好!露出してる腕と大腿は血管が浮き出るほど力が漲って、両の目は闘志が満ちている!
「中で監視カメラで見てたからわかっていたけど、実際見みてみるとひでぇもんだな」アーケードの狼藉を目にして、デケイティアスは嘆いた。「こんな保険金がカバーしきれんぞ。どうしてくれんだ?ああん?」
「そうだね……俺を捕まえてボリボリ警察に突き出して、訴訟でもしてボリボリ賠償金をもらうのはどうだ?」ヘラクレスはポッキーを口に送りながらきざっぽく返事する。「ワンチャンあるかもしれんボリボリ、でもまずは法的に幽霊の存在を認める前提だがな!ボリボリボリボリッ!」
煽るヘラクレス!口からポッキーのカス飛びでる!それがデケイティアスを苛立たせた。
「図体がでかいわりにはマナーがなってないな。おねえさんはね、物を食べる時に口を閉じない子がこの世に一番嫌いなんだ。正してやろうか」
「お?やんのか?」まるで筋肉の山が動いたかのように、ヘラクレスが立ち上がった。「いいだろう、ソーちゃんの無念はこの俺がーー」
「また死んでおらんぞ」
壁にめり込んだドアが開かれた。後ろにいるソーは壁から手足を引き離して、床に降り立つ。埃がついた服を叩いて、乱れた髪を指で梳いてオールバックに整う。
「よし、っと」
身なりが整えて、ソーはデケイティアスに目をやる。クリス・ヘムスワーズ似のハンサムフェイスは瞬間に悪鬼じみた表情に変化!
「この阿婆擦れがァーッ!姿を変えようが我が目は誤魔化せんぞ!若い姿に化けてむしろ好都合だ!凌辱しつくていやろうぞ!」
言い終わると、ソーは右手を頭上に翳した。
「アッ、あのジェスチャー、もしや!」
「ちょっ、声が大きいって!」
スタッフルームから、トイズロのお兄さんと不良少女は頭だけを出して恐る恐る様子を見ていた。
怒りが絶頂に達したソーがようやく本気を出す!その前にバンプアップした五色かさねこどデケイティアスは一体何者なのか?というか五色かさねは誰か?そろそろ読者がついてこれないじゃないか?次回で答が得られたらいいよね!
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