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辛い麺メント:肥腸麺

~この記事は事実です~

7/21、土用の丑の日だが、イールを食べる予定はない。先週はラーメンお寿司やよい軒の三連贅沢コンボを決めて人権を消費しきったため、月末まで一食500日本円以下のエサで過ごさねばならない。俺が自分に課した贖罪である。

今日も高温高湿、いつものように俺は限界に瀕した。嗚呼ジーザスクライスト、アナタ我々の罪を全部背負っていったのではないですか?なぜわたしはこうして苦しんでいるのです!

『貴方が私をフリー素材に扱ってきたからですよ。弁えなさい』

鬱陶しいぐらい青い空にジーザスの顔が浮けべて俺を諭した。そう言えばそうでした。俺だって自分がフリー素材みたいに扱われたらたまったもんじゃない。納得。すみませんした。

『ですが私もデーモンではありません。迷える赤ちゃんヤギに救済の道を示そう』

ジーザスは指でさすと、その指先に太陽光が収束して、レーザーポインターみたいに道の先にある店を照らした。

姐夫重慶麺館。あの後も何度訪れた店だ。

「なるほど。辛い麺を食べて涼しみわけだな!ありがとうジーザス!」

ジーザスは微笑み、フェイドアウトした。俺は灼ける太陽のしたで歩き進む。

「よぉ、吃麺(麺たべる)?」と挨拶してきたシェフに会釈し、入店。エアコンが心地よい。早速救われた気がした。注文はすぐ決めた。

「肥腸麺、大で」「あいよ。肥腸麺 、大!辛いはOK?」「はい」

暫くして麺がきた。

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ここの看板の一つ、肥腸麺 である。別名は300日本円で買える救済だ。見ての通りトッピングは小腸。スープに浸っていない麺はチェフから「たまにはその予測変換に頼りきった貧弱の腕で麺を混ぜてみやがれ」というメッセージを読み取った。混ぜちゃうぜ。

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ほーら、麺にこんなに唐辛子が付いている。辛そうに見えるだろ?いただきます。あむぅ……ちゅる……

麻ァーッ!

花椒ががたまんねえ!すぐに舌と頬の裏がビリっと来た。柔らかい醤油でじっくり煮込んだ小腸は柔らかく、麺全体の味を引き上げている。そして水が有料のこの店では、脂が乗った腸にはもう一つ重要な役目がある。

ご存知の通り、唐辛子が辛いのはカプサイシンから来ている。カプサイシンは脂溶性のため、一般的に辛さを抑えるには全脂牛乳、アイスクリームなど脂肪量の多い乳製品が一番有効とされる。この理論でいくと、脂が充分の腸もまた辛さ抑止する力になれるはず……の気がする!だから幾ら美味くても万が一の時のために問っておこう。と思ったが杞憂であった。こんなに辣油が赤くてどっぷりかけているのに、辛さは控えめで、啜っても気管が焼ける感覚がほとんどない。ずっと食べていられる気分だ。

当然ずっと食べていられるはずがない、300円で買える救済は量が限られている。5分足らずに麺と具を腹に収まり、程良く発汗した俺はスープとに睨み合った。

『意気地なしめ、飲みきれないのか?』

いやだってあんた(ここのスープ)は正当の麻辣スープで、砕いたスパイスがたくさん入ってるでしょう?飲んだら胃が持たないって。

『おまえの実力は所詮その程度だ。辛い麺ファイターと名乗るとは笑止千万よ』

なんだと!?こんな屈辱を受け入れられるほど俺が温厚でないわ!飲んでやるぜ!

『そうだ、それでいい。おれをおまえの血肉にしろ……!』

俺はスプーンでソープを掬い、啜った。ずず……ほぁー、やっぱここのスープはうめえ。もう一口、ずず……でもやはり砕けた花椒が口に入るな、苦いし歯に挟んじゃうから不快なんだよ。ずずず……しかしそれが構わなくなるほどスープがうめえ……ずずず……ぐる……ぐる……

俺は麺椀を持ち上げて、残り少しぐらいまでスープを飲んだ。嗚呼、またやってしまった。これじゃ夜か明日は絶対肛門が焼けるよ。

「ご馳走さん。旨かった」「アザした。まいどー」

会計を終え、発汗で少し涼しくなって、救われた気分になった俺は店を出た。ジーザスに感謝。

『いいって事よ』

空に浮かぶジーザスヘッドがウィンクした。

(終わり)

せっかくなんで店のアドレスをあげておこう。勝手に行って、勝手に救われて来い。案内する気はない。Googlemapが表示した店名が記事と違ったのは、シェフかGoogle、とっぢかの怠慢だと思う。



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