足が小さ過ぎたので女性用のシューズを買った
今履いているスニーカーは四年使ってきて、ランニングと筋トレでそれなりに痛めたのでそろそろ変えようと思った。
昼休みに新しく開いた靴屋を見かけたので、入ってみた。LI-NINGという中国発のブランドだそうだ。初めて見たぞ。
上空から屍を狙い定めたコンドルの如く、店員のお兄さんが迫ってきた。こういうシチュエーションは好ましくない。静かに、ゆっくりして見たいんだよ。
「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」
お兄さん長身で、顔が爽やかだった。アーくそ。ずるいよな。スタイルが少し良かっただけで気が許してしまう。
「ちょっとランニングシューズを」
「男性用のランニングシューズならこちらになりますよ!」
お兄さんが示したコーナーに、ランニングシューズっぽい靴がずらーっと並んでいた。ほう、なかなかいかしたデザインじゃないか。でも本当に大事なのは、価額だ。俺は適当シュー(一つだけなので”ズ”は付かない)を手に取って、ラベルを探った。ラベルは靴底にあった。1500元(およそ4500日本円)か、妥当だな。
「それは今年の新モデルですよ。クッション性に優れたミッドソールが搭載されて……」
つかさず説明に入る兄さん、勇ましい商魂だわ。言ってることは40%しかわからないけど。この後は幾つの靴を裏返して
「こちらはスポーツ性より日常生活用で……」
「これはいいやつですよ。シャンクの部分が弓型構造で踵の負担を軽減して、挫傷を防ぐんです」
これがいいな。見た目かっこいいし。
「これにしたい」
「では試着しましょうか。足のサイズは幾つですか?」
「26~27㎝ぐらい」
「わかりました。少々お待ちを」
しばらくして兄さんは靴の箱を抱えて倉庫から戻った。
「こちらはこのモデルの最小サイズですが……28cmになります」
マジかよ。このブランドは足が小さい男に人権がないっていうのか?とりあえず試履きしてみた。やはり大きかった。
「申し訳ありません!当店ではこれが最小サイズです」
「そっか……」
ハァー……と。俺はクソデカイ溜息を吐いた。俺は胸襟と胸囲が大きいが、足のサイズが小さかった。それに対してずっと劣等感を抱えていた。ホビットみたいな大きな足が羨ましい……兄さんよ、あんたは悪くない。在庫に俺に合ったサイズのシューズがなかった、これはただの不運、悲劇や。
「あっ、でも、女性用の同じモデルなら26㎝ありますよ。男性とのモデルは同じなので、もしよければ試してみませんか?」
はぁ?
おい。
おいおいおい。
おいおいおいおいおいおい。
顔がいいからって何でも許されると思ってんじゃねえだろうなあてめえ?えぇ?
逆噴射小説大賞の最終選考には行かなくても、メキシコの荒野を生きようとしている男だぜ?女の靴を履くとかなめすぎてねえか?
俺は立ち上がり、兄さんにフィットボクシングで鍛えたジャプ、ジャプ、アッパーを見舞してやろうと思った。そして俺は見た。
女性用シューズのカラー、めっちゃよかった。
「これ良さげだね。試履きしていいか?」
「はい!すぐお持ちします!」
命拾いしたね兄さん。
👟⚡👟
「ありがとうございました!」
袋を提げって、俺は店を出た。今日から新しい相棒だ。よろしくな。
箱はこんな感じ。SOG社のSealsよりとほぼ同じ長さ
本体。SOG社のSealsの方が長い
正面。金属光沢を帯びたグレイです。COOL
CRAZY RUN、走り狂い、マグロ・サンダーボルト
これが弓型構造ってやつよ
靴底にピンクが奥ゆかしく配分されている。プリキュアみたいだ
ピンクが入った靴はずっと欲しかった。これもまた運命かもしれん。
*この記事は60%フィクションです。作者は人に手出しするガッツがありません。平和が一番です。LOVE&PEACE。
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