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辛い麺メントIN TOKYO⑤ #ppslgr

「よし、みんなミルクタンク持ったな」
「ああ」「おう」「問題ない」「万端です」

 R・Vをはじめとするパルプスリンガーたちとイマジナリーフレンドの一名が俺のイマジナリーコンビニで購入した(全部が俺がSuicaで決済した。チクショウ)8L入りのミルクタンクを背負ったり、手に提げたりしている。

「では簡単にブリフィーングを行う。ただいま、新橋周辺に狐頭怪人によるスパイステロ被害がSNSで飛び交っている」

 R・Vは忙しく指をワイプしながら言った。

「現在確認できたのは駅前の蕎麦屋、みなとみらい方面にあるタコス屋、ラーメン屋とステーキハウスだ。これらの地点に我々はミルクタンクを携えて向かい、被害者の救助とM・J……マラーラーの捜索を行う。俺は蕎麦屋へ行く」

「タコス屋はおれに任せろ。タコスといえばメキシコ、メキシコといえばルチャリブレだからな」マスクの上を金網で補強したH・Mは名乗り出た。

「ラーメン屋は私が向かいます」とS・G右頬に刻まれた『百毒不侵』の熟語が白い光を放っている。こうなったら最後は。

「俺とダーヴィはステーキハウスに行ったらいいよな?」

「ああ、よろしく頼む。そしてマラーラーを発見したらほかの皆に連絡を送れ。あれはもともとM・Jだからな。連携して捕縛すれば元に戻せるかもしれない。では行動開始だ。健闘を祈る!」

「「「応!」」」

 R・Vは駅方向へ向かい、H・Mはみなとみらい方面に走り出した。S・G膝を曲げるt高く跳躍し、ビルの間を軽功走行で渡っていった。

「Dude、おれたちも行くぞ」「だな」

 地図アプリで方向を確認し、俺とダーヴィが歩き出す。

🍜🌶🔥

 マラーラーは右手をかざすと、掌から放出された赤煙が渦巻き、赤黒塗装の大型拳銃の形となった過程を金髪の男、すわなちエルフの王子が人間より遥かに優れた視力で捉えた。

(あれはM・Jのストリームバレット。M・Jの力まで再現できるか……ッッ!)

 王子は咄嗟に頭をずらし、ヘッドショットを狙った赤い弾丸を回避!M・Jが撃つ高圧水弾に対し、マラーラーが放った弾は濃縮辣油なのだ。

「妖狐めッ!」

 ビュン!返礼ばかりに放った矢を、マラーラーはクリムゾンバレット(仮)の三点バーストの一発目で相殺し、残り二発が王子を抉りに行くが、王子はすでに電柱の上にいない。矢を放った直後にバンジージャンプみたいに大の字で電柱から飛び降りたのだ。

「疾ッ!」落下途中に王子が電柱を蹴り、弾丸的加速!弧線を描かずほぼ一直線にステーキハウスのガラス窓に王子が両腕をクロスして衝突!CRASH!ぶち破る!

「ヒィィィ!?」

 女子大生は悲鳴をあげた。王子はソファ席をクッションにして受け身を取った途端またマラーラーの右肩を狙って矢を放った。マラーラーは腕を振り、バレルの下に銃剣めいてついた刃でそれを難なく弾いた。狐面は嘲笑う表情にすら見える。

『辣ァーハハハッ!便利なおもちゃがあったものよ!』

(手抜いていい相手ではないな、だがまずは)エルフの王子は女子大生に一瞥した。状況を理解しきれない彼女はキョロキョロと頭を左右に振り、マラーラーとエルフの王子を交互に見ている。

「落ち着きたまえ!私は必ず助ける!」「……は、はい!」

 僅かの言葉で、女子大生はエルフの王子に莫大な信頼感を寄せた。なぜなら彼は若かりし頃のオーランドブルームに似ている。しかもイケメンで、エルフだ。何とかしてくれるに違いない。

『貴様はエルフの王子だな。記憶にあるぞ』

 一方、マラーラーはクリムゾンバレットのクリップを捻り、剣にモードチェンジした。クリップがバレルと一直線なり、刃がスライドして銃口に付けた。更にマラーラーの妖力によって刀身が赤く染まり、まるで固まったTABASCOで形成された剣だ。

 エルフの王子は弓を捨て、腰を低く落とし、レスリングじみたオフェンシブの構えを取った。マラーラーはやや意外そうに頭を傾けた。大腿四頭筋が張り詰める。

『どうした?聞かないのか?M・Jは生きているか、どうすれば元に戻せるかとか』

「妖物の戯言に聞く耳なし」矢じりめいて鋭い眼光でマラーラーを見つめながら王子が言った。「無実の婦人に手を出した時点で貴様は死刑確定よ。A・K達には悪いが、ここで仕留めさせてもらう、ゾォ!」

 床を蹴り、王子が爆発的推進力の低空タックルを仕掛ける。マラーラーは対応し、掬い上げる斬撃を繰り出す。刃と王子の身体が接触!このまま両断されてしまうのか!?

 しかしそうはならなかった。王子はさらに重心を前に倒し、自分のハンサム顔が床に擦れるも構わず強引に前進しマラーラーの股下を通り抜けた。TABASCO刃の剣先は背中を浅く斬った。振りの勢いで、マラーラーの両肘が頭部と同じ高さに上がっている。それが王子の狙いだった。

 歯を食いしばった王子はコアマッスルをフル稼働して体を起こし、右手がマラーラーの脇したを通って後頭部に組み付き、左手が狐頭の左から首に輪をかけて、右手を掴んでロックする。さらに両足も外側からマラーラーの大体を絡めとる。相手に一糸の反抗も与えない、無慈悲の片羽絞めが完成だ!

『ガッ……!』妖狐の目は一瞬驚きの神色が走ったが、すぐさま王子の絞めに脱すべく全身の筋肉をに入れて漲らせる。「ヌゥゥゥーッ!」王子は上腕二頭筋を強張らせ、マラーラーの気管を圧迫しながら女子大生に叫んだ。

「今だァ!行けぇー!」「ハイ!あの、すみませぇん!ありがとう!」

 女子大生はアドレナリン分泌の影響で信じられない力を発揮し、同伴の友人を抱き上げて破れた窓ガラスを飛び越えて外に出た。店内にエルフの妖狐の拮抗が続く。

『グ……ギッギ……』ヘルメットの換気口、狐の口角に当たる部分がよだれらしき液体を垂らし、握力を維持できない右手からクリムゾンバレットが落ちた。空いてる左手で相手の指や腕を極めようと試みたが、王子の絞めは万力をかけられたような堅牢で、揺るがなかった。

 しかし王子に至っては無事ではない。背中の傷は浅いものの、傷口がTABASCO刃の辣毒に侵され、筋肉組織が赤く膨れ上がっている。灼熱感を伴う刺激痛、しかしそれは逆に王子の殺意を助長し、締める力をさらに強めた。

「ものの怪よ!世のため人のため!縊り殺してくれる!」

 憤怒と痛みで顔が赤らんで、あたかも審判を下す閻魔大王めいて、エルフの王子が言い放った!

((絶たせるものか!オレの使命……チリペッパーの福音……!))意識が朦朧になりつつあるなか、マラーラーは肺の中に残りわずかな空気で声を絞りだした。

『カイイェン……ハバネロッ!』

 呼応するように、狐頭を模した肩鎧の目がピカッと光ると、金属板が軋んで変形し、関節機構を備えた金属パーツが折り畳みナイフのように展開する。

 優雅かつ軽やかな動きで、二体の狐ロボットはマラーラーの肩から飛び降りた。

(続く)

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