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地の核を穿つまで

授業時間、少年はグラウンドに立っていた。顔にアザと鼻血の跡が付いて、着ている制服はほつれて、汚れていた。

当時はグラウンドを使用しているクラスが居なかった。少年は突然、地面を殴り始めた。グラウンドの土は固い。皮膚が破け、血が滲むが、少年は止まなかった。

その奇行は注目を集めた。生徒達は窓辺に集まって地面を殴る少を眺めていた。彼の担任がそれを止めるべく校舎から駆けつけるが、少年に殴られて倒れた。

学校中が騒ぎ立てた。教諭は警備員を連れきたが、少年に殴られて倒れた。それから体育教師、柔道部の主将、番長も来たが、全員殴り倒された。

邪魔者が居なくなり、少年は地面殴りを再開した。通報を受けて、警察が学校に入った。

現場にいた岸田巡査(44)は後日にこう述べた、
「仕事柄ね、おかしな奴をたくさん見たわけで、並大抵じゃビビらないと自負していましたが、彼は別格だった。両手から血が滴り、骨が露出してなおも拳を握って、向かってきたんです。盾と警棒を装備した警官5人が、中学生1人に抑えされたんです。異常ですよ。だから銃を使いました。過当ではない、ああするしかなかったんです」
「あの子から凄まじい怒りを感じました。しかしその怒りは我々警察に対すしてではなく、もっと大きな何か……上手く言えません。何が彼をそうさせたんでしょう」

現場では直径50cm、深さ20cmの窪みが残された。少年の手によるもだったと。

私はクリップボードをテーブルに置き、向こうにいる男に目を向けた。

ファイル写真と別人に見えるほど頬が窪んで、腕が木の枝のように痩せている。手錠でテーブルに固定されている両手だけはサイの皮膚のような厚い角質に覆われている。地殴り少年ごと、芽世めせいけん、ご本人である。彼をここから出すのは私に課せられた任務だが。

「とりあえず、ここにサインしてくれる?」

彼は私が差し出した書類を読みもせず、不自由の両手で破り捨てた。

(続く)





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