【剣闘小説】プラン・フィールドの闘士
「まずいな……」井戸の中を覗き込み、腰に手を当てて立ち尽くした。
その原因はこうだ。
今日の訓練のあと、ストラウベリーに水汲みを命じられたドゥームは革鎧を着たままバケットを持って井戸に向かった。その途中で楽になるため鎧の留め具を外してを緩めたことが仇となり、落としたバケットを持ち上げる際にベルトが外れ、革鎧がそのまま井戸の中へ滑り落ちた。
「どうすっかな〜」
ドゥームは泳げなくもないが、一人で井戸に潜って地上に戻るのは厳しい。人を呼んで手伝ってもらうなら?第一自分仮でもは奴隷の身分だ。市民に声をかけると怪しまれる上にこのことが絶対にストラウベリーの耳に入る。これだけは絶対に避けたい。
縄を垂らして、縄を伝って登って来れるか?と考えるドゥーム。そして突然井戸から放たれる金色の光とともに、ローブを纏った中年の男が浮上し、その手にドラゴンの意匠が入った白金の胴当てとライオンの形象を模した黒い胴当てをもっている。
「ワッダ!?」驚くドゥーム。胸当てのことではなく、金粉みたいな物を体から放出しながら井戸の口から30センチ上に浮遊している男に対してだ。
『若き剣闘士よ、わしはプラン・フィールドのトゥーフー。昔はおぬしと同じ、奴隷剣士だったが、いまこのように井戸の中でおぬしのような者が井戸の中に武具を落としてくることを待ち構えている。ここまでは理解できるかね?』
「アー、はい」ドゥーム適当に返事した。当然彼女は事態を1%も理解できていない。
『早速だが、おぬしが落としたのはこちらのドラゴンスキンか?それどもこちらのライオンズアンガーなのか?』
「あ、いや、どっちでもないんです」ドゥームは素直に答えた。漢の存在感に圧倒され、鎧をねだる気すら起きなかった。
『なんと』男は目を見開いた。『躊躇なく答えるとは?おぬしは正直ものよのう。ご褒美にわしが持っていた装備を全部与えてやろう』
「エッ、それって」『遠慮はいらんぞ、受け取れ!』
ボッフワァァァァーーン! 井戸から大量のswordとamorが排出され、ドゥームに降り注ぐ!
「つ、潰されっ」
逃げる間もなく、トゥームが大量な装備の下敷きになった。
🗡️
「…さん」
「……ムさん」
「ドゥームさん!」「うおっ」
目を開くと、オーキッドの心配そうな顔を見て、自分は寝ていたことを思い出した。悪夢の記憶は覚ましたと同時に去っていく。
「大丈夫?すごくうなされたんですけど……」
「あー……なんか変な夢を見た気がする。大丈夫だ」
「それは良かったです。そろそろ起床時間なので、着替えてください」
「はいよ」
剣闘士に朝は早い、時間は現代で言うとまた午前四時だが、朝食の前に基本の身体鍛練が待っている。
厨房の方去ったオーキッドを目で追いながら、ドゥームはため息し、ローブを解き、胸に布を回し、下半身にふんどしを結んだ。
一日が始まる。
このnoteはフィクションです。デーダカードダスアイカツ!とアニメ『アイカツ!』シリーズと一切関係ありません。
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