炒飯神太郎③

「おじいさんお帰り。遅かったから先に飯食ってるよ」

家に帰ったおじいさんが見たのは、大きな中華鍋から直接スプーンを差して山盛りのチャーハンを食べているおばあさんでした。そのチャーハンがあまりにも巨大で、山で例えるのなら普通の大盛りチャーハンが富士山でおばあさんが食べているチャーハンが火星のオリンポス山ほどのスケールでした。驚いたおじいさんは口がカァーっと大きく開きました。

「おっ、おぉおばあさん!なんなんだあのチャーハンは!?ハッ、もしや虫プロテインがメインの生活に嫌気を差して領主の米倉の襲撃して米を強奪……」
「そんなことせんわ。川辺で洗濯していたら流れてきた。鍋ごとに」
「流れてきた?妙だね……米=命脈のこの時代。これほどの米を使ってチャーハンを作った上で、川に流したってことか?考えにくいだが……何らかの陰謀では?」
「心配性だね。あたしゃもう食べてるし。美味しいし毒が入ってないよ。おじいさんも食べな」
「うん」

 考えても腹が膨らみません。おじいさんはおばあさんからスプーンを受け取りました。

(よくパラつかせたチャーハンですね。米の色は全体的に白くて油気がすくないそうです。具はたまご、ネギ、ニンジン、あとはこの茶色い謎の塊だけかな?見た目は素朴なチャーハンですね)

 おじいさんは自分の妄想の中でしか存在しない撮影クルーに向けて食レポを始めました。

(では早速いただきましょう。あむ。もぐ……もにゅ……ボリッ。むっ、なるほど、茶色いの塊の正体は台湾の大根の漬物、菜脯(ツァイボ)だったんですね!原型は日本のたくあんだと言われているけど、たくあんよりさらに水分を絞って食感が固くて発酵食品の感じが強く、全く別物だと考えた方がいいでしょう。味付けが薄い米と塩気の強い菜脯が混じって、噛めば噛むほど味が口の中で画渾然一体となっていく。簡素でありながら匠心がこもった一品ですなぁ!これはうまい!)

 脳内で絶賛するおじいさんでした。二人はしばらく黙ってチャーハンをもぐもぐと食べていました。

「もぁ?」

 突然、おばあさんのスプーンは何か硬い物に当たった。

「なんだ?チャーハンの下に何が埋まっている?」
「ほんとうか?さっきからこのチャーハンは美味いけどどうもタンパク質不足って思ったけど。もしかしてこの下に丸一本のチャーシューが隠れていたりして?」
「だったらいいけどね。掘ってみよう」

 おばあさんとおじいさんはスプーンでチャーハンを搔き分けました。するとチャーハンの中から現れたのはチャーシューではなく、肌色が広東式チャーシューのように赤い赤ん坊でした。

「なっ、なんじゃこれは!?」
「育児放棄にしては手段が奇抜すぎるぞ!」

 おばあさんとおじいさんが訝しんだと同時に、赤ん坊は目を開きました。その金色の目は怪しげに輝きました。

チャーネットに接続可能な生体端末2つ検知
Char-Fiテザリング起動
対象をチャーネットに強制接ぞ

「喝ァッ!」

 おばあさんは赤ん坊の頭を掴んで吊り上げました!

(続く)

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