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【剣盾レポート】最近のじでんしゃは水上を走る

「オウマイルギア……自転車で水の上を走れるなんて!」

 9番道路で落ち合ったホップとはいすい。二人雪が降りしきる砂浜でデントを張り、休憩を取ることにした。

「何時までもなみのりが手に入らないと思ったら、自電車にパーツをつけて水上を走るとは。十年前と何もかも違ったな」はいすいはきのみをカッティングしながら言った。

「あっそう」一方、ホップは薪に火を点けながら興味なさげに言った。

(またきた。また隙を見て十年前のこと話したがっているぞ!塩対応で喋る気無くしてやる!)

「ああ……またジョウトにいた頃はみずタイプのひでんマシンが最大3個もあって、クラブを苦労させたものよ」
「あっそう」
「なみのり、うずしお、たきのぼり、あとはいわくだきも覚えさせたか?バトルに全然出さなかったけど頼もしい旅の味方だった」
「あっそう」
「あれれ?なんか親友ノリが悪いね?せっかくルギアをゲットしたときの話を聞かせてあげるってのに」
「……ルギアだって?」

 ホップはうちわで火を煽る動きを止め、はいすいへ向いた。

「あのジョウト地方に伝わる伝説のポケモンが?」
「おっ、釣れたか」
(しまった!)ホップは自分のウカツを悔しんだ。だってルギアだぞ!
「わーかった、俺の負けだ。ルギアの話を聞かせてくれ」
「そうこなくっちゃ!ライジングバッジを手に入れ、リーグチャンピオンに挑む権利を手に入れた僕はマスターボールを携えて、ジョウトの最後の秘境、うずまきじまへ赴いた。島を守るうず潮をひでんわざのうずしお相殺し消失させ、洞窟に入った。ランターンの光で暗闇を照らし、クラブにしがみついて野生ポケモンに警戒しながら地下へ、また地下へ進んだ。ポケットに仕舞っている銀色の羽は進むに連れて光出した。僕は確信した、この先に何があると」

(ウオ……なんかすごく真実味があるぞ)ホップはいつの間に聞き入れた。

「滝から滑り落ちて、その横にある通道に入ると、そこは巨大な海底空洞だった。しかしその神秘な光景をよりも僕の目を奪う存在がそこに居た。白銀の羽を持った巨鳥、あるいは太古から生き続けて来た龍が静かに水面に浮かんでいた」

『よく来たな、おれはエアロブラスタールギアだ』脳の中に声が響いた、ルギアのテレパシーだ。『おれは海の神と崇められるほどの凄まじい力を持っているが、誰にも見せるつもりはない。おれを下僕にするつもりなら、それに相応の覚悟をしておけ』

「威圧感に耐えながら僕はルギアを見上げた。『違う!下僕ではない、仲間だ!ルギア、きみの力を貸してくれ!』と僕は言った。ルギアは喉を鳴らした『Grrr……だがそのマスターボールでおれを無理やり従わせる気だろ?腰抜けはすぐに安直な道を選ぶ』『ああ、だから使わない』僕はそう言い、マスターボールを海に捨てた」
「なっ、勿体ねえぞ!」
『ルギァーガガガガ!!!面白い奴だ!ならお望みに応えよう。かかってこい!』それが叙事詩めいたバトルの始まりであった。いやぁ本当に凄かった。暴れまわるルギアにしがみついて何発も拳を入れてさぁ」
「は?」
「そして数日後、無事ルギアをゲットした僕はチャンピオンロードを登り、四天王とワタルに挑戦した。それがまた別の話だ」
「……いくら何でも盛り過ぎたぞはいすい。モテたいからってこんなホラ話を言い続けると、いつか俺しか話し相手が居なくなるぞ」

 ホップははいすいの両肩を手を添え、極めて真剣な表情で言った。

「えっ、あっ、いや。だって本当のことだし……」
「疲れたようだな。早くめしを済まして休むぞ。ほら、手を動かして!」
「でも本当だし……」
「はいすい……」

 しばらく気まずい雰囲気になりながら二人はなんとかカレーを完成させた。タイオウドウ級の美味しさで二人はさっきの会話をすっかり忘れて、笑顔でカレーを平らげた。

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