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ソーコー

「やぁ、僕怨霊!僕のヘルメットを拾った君は運命の相棒!僕を成仏させるため一緒に環島かんとうしようぜ!」

男は満面の笑みで言った。年齢およそ20前後。キノコヘア、丸メガネ、黒いTシャツとスキニーパンツ、腕に龍と鷲のタトゥー。街によくいるタイプの若者。ついさっきバイクのシートに置かれた見知らぬヘルメットを拾うと急に現れた。

「あ、急いでるんで、話は途中で聞いていいですか?」
「いいよ」

何がともあれ遅刻は避けたい。私は怨霊君と2ケツで家を発った。バックミラーにノーヘルの彼が映っているが背中に感触がない、車体に二人分の体重かかってる感覚もない、パトカーを横切っても何の反応を示さない。本当に幽霊か。

「で僕ワルじゃん?交通ルール眼中にないじゃん?そんである日ダチと走ったらしくって事故で死にそうになって、あーもう一度環島してぇなと思って、ダチん中に道教やってる奴に魂をヘルメットに移ってもらって運命の相棒に願いを叶ってもらうことにしたんだ」
「そんな冥婚みたいな手口……じゃなぜ私のバイクに仕掛けたんです?」
「運命の相棒つったら可愛い子がいいじゃん?僕の経験上青いLimiに乗ってる女子大生が多いんだけど、まさかおっさんの単車とはね。でも大丈夫、今更こだわったりしないよ」
「はぁ。因みにもし私が拒否したらどうなる?」
「お勧めしないね。これでも怨霊なんで、人間を破滅させる手段いくらあるんだね」
「それは怖いな……」

しかし環島か。今まで何度か行こうと思ったけどついつい怠くて実行しなかった。これはいい機会かもしれない。

翌朝、4日の有休を取った私はリュックを背負ってバイクに跨った。

「そんじゃ行きますか」
「おう、頼むぜ相棒!」

そして出発して暫く、後ろから数々の苦情が飛んできた。

「あそこ空いてるぜ。なぜ抜けない?」
「赤信号なんて参考程度だろ?警察いねえし行けって」
「黄色信号こそ加速すんだよ!ノロマが!」

やっぱこいつ苦手かも。

(続く)

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