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三味飯

通っているジムの近くに、香港人のおやじさんが一人でもりきりする小さな飯屋があった。前は筋トレの後に一回訪れたが、それはもう大変美味くて、味付けと盛り付けの雑さがまるで香港の小汚い屋台で食べていたような感じだ。

「すんません、三味飯 はまたありますか?」
「ええ、ありますよ」
「じゃあ一つください」
「テイクアウト?」
「いや、店内で」
「はい、ちょっと待ってね」

 本当にちょっとしか待ったなかった。約一分で料理が出た。

「ほい三味よ」
「ありがとうございます」

では三味飯の構成を見てましょう。

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①世界有名な不健康形成肉のSPAMです。もうこの時点で美味しいと確定みたいなもんよ。ちょっと焦げ目がつくまで焼いてある。もう最高。

②豚のロース肉。香港では豬扒と呼んでいる。醬油や酒などで漬けてフライパンで焼いたもの。オーソドックス。

③叉焼肉。赤い方だ。この色に関しては紅麹で漬ける際に色素が染み込んだからか、食用色素を塗ったか。文字通り焼いたものなので日本のラーメン用チャーシューと比べて歯ごたえがあって、味が甘め塩っぽい。この叉焼はアクズメさんが週に二回ほど食べるほどの大好物。

④目玉焼き。目玉焼きを乗せただけでチョーうまそうに見える。夢もファンタジーも死に絶えた現代に残された数少ない魔法ね。半熟と全熟が選べる。生?冗談じゃないぜ。ここの日本じゃない、当たってしまうぞ。

⑤青江菜。肉とたまごの下に隠れている。野菜は大事だ。文句言わないで食べなさい。

スマホをしまって、いざディッグイン!……の前にちょっと待って、またやりたいことがある。

叉焼を摘まんで、卵黄を破って……絡めて……

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こうだ!どうよ、飯的恐怖を感じたかフォロワー!ハッハッハッ……あっやべぇ、いま書いている自分が腹減ってきた……

教訓:飯テロは無慈悲で無差別。すべてを飢餓の渦に飲みこむ。

三味の名はもちろんSPAM、ロース肉、叉焼から来ている。どれも味が違うが、塩分が大量に入ってることが共通だ。加えて下のご飯まで醬油ベースのソースをかけてある。三食でたべたら二週間ほどで腎臓壊れそう。そして腎臓破壊料理の例にもれず、めちゃくちゃ美味しかった。まるでこんな徹夜中に小腹が空いた大学生が作った頭の悪い焼き肉丼の豪華バージョンだ。アホの料理。とけた卵黄がソースが染み込んだ米に交わって、ドロドロで濃厚な味わいが思考を破壊する。もう内臓がボロボロだわ。そして申し訳程度の青江菜はこの罪深い一丁にささやかな救済をもたらしてくれる。野菜は大事だ、健康のために嫌でも食べなさい。

ふぅ、ごちそうさん。身体に悪いの物は何でこんなにもおいしいでしょうね?もし死んだら神か悪魔に問い詰めたい。

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