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辛い麺メント:涼皮

「涼皮ァ?」
 店に入った途端、大陸訛り中国語を操る女将さんが尋ねてきた。
「はい」
「辛さは?」
「大辛で」
「は大丈夫?」
「はい」
「ちょい待ちね」

 俺はL字カウンターの角の席座り、振り返って彼女の仕事に注目した。店の外側にある調理場で、女将さんが乳白食のケーキみたいな物体の上から一枚の薄い皮を剥がして、3回折り畳んでまな板に載せたあと、包丁でカットする。カットされた皮を碗に移し、調味料を加えていく。白酢、なんらかの透明な液体、ごまだれ、辣油、ピーナツ、ニンニクおろし、コリアンダー。最後に新鮮なきゅうりをその場でおろし金で削り、全部混ぜ合わせるようにかき混ぜると完成。

「涼皮ァ大辛。おまちど」
「ありがとう」

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涼皮(リャンピー)、または釀皮(ニャンピー)、麺皮(メンピー)などで呼ばれる。それすべてが陝西省から発祥の平べったい麺料理のことを指す。唐代から似た料理の記録があったとか。歴史が長い料理だけあってその派生が多岐にわたる。俺もここでしか食べたことないのでここの味は俺にとって涼皮の基準になっている。実際この店に来たのはこれで3回目となる。

何故今更記事を書き出したか、それは今まで涼皮についてよくわからなかったからだ。小辛、中辛の順を踏んで、今回の大辛を完食して初めて涼皮について語る資格を得ると、私の中の辛い麺マニアが囁いている。

前述の通り涼皮の作り方は派生が多い。米粉に水を加え糊状の生地に練りあげ、容器に入れて広げて、蒸して固めるのが一番メイジャーという。

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米粉でできるライス・ヌードルのなかでも、涼皮は特に。初めて食べたときは驚きだった。とにかく弾力がよく、顎にある程度力を入れないと噛み切れない。食欲を引き立てる酢の酸味、胡麻の香り、辣油の刺激性、噛めば噛むほど味が混ざりあっていく。見た目攻撃的だが味は重くなく、あっさりしていてどんどん進める。大辛でも辛さは予想してたより辛くなかった。冷麵タイプなので辛さを抑えたか、ごまだれの油で辛さを中和したのか、それとも単に俺が強くなりすぎたか。

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これがセイタン。お麩のことだ。歯ごたえはやや硬め。調味料をよく吸うので噛むと汁がほとばしる。きゅうりの量が半端ない。きゅうりが苦手だがこうやって細かく刻んだやつを辛酸っぱいたタレにつけるとなんとか食べられる。野菜が大事だぞ。

アクズメさんのきゅうり許容範囲:
かっぱ巻き セーフ
サラダ用に薄くスライスしたやつ 頑張ればいける
サラダ用の厚みのあるやつ アウト
生で齧る 完全にアウト
ピクルス 大好物

調べたところどの地域の涼皮も動物由来の食材はほとんど使わないのでベジタリアン的にも人気。

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完食。発汗で頭が涼しくなったが唇と胃の中は辣油に炙られて未だに熱い。またこんなに汁が残っているが飲めるものではないのでこのままにしておく。会計を済ませる間に、店の外はUber eatsなどの配達業者が3人ほど待っている。これから気温がどんどん暑くなって、涼皮の必要がますます増えるだろう。

今回のお店

これであなたは涼皮に興味が湧いたはずです。中華料理屋に行く際はぜひ探してみてください。

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