スレイド・オブ・グラディエーター【大会報告、期間延長】
「市民たちよ、聞けィ!」
皇帝席で、剣闘王(スターライトクイーン)エンペラー・グレイウォーターは自動生成観客に向けて発話した。大きな声を出すために腹に力を入れ、その腹筋が切れている。
「現時点で、剣闘文学トーナメントに参加する作品は五つになった。ようやくトーナメントらすくなってきた!しかし残念なことに、あと三日で、トーナメントが終わってしまう」
Oh……と観客席からため息の合掌が聞こえた。自動生成観客はトーナメントを盛り上げるために自動生成された自我のない存在、剣闘王が望む反応を取るぐらいの知性しか持っていないのだ。
「だが市民よ、嘆くなかれ!私はただいま決意した。なんと、締め切りを四月二日までに延長する!出血大サービスだ!」
ワァァァー……と観客席から歓声が響いた。
「10日もの時間が増えた!しかもエイプリルフール期間でネタもより込めやすい!我ながら素晴らしい采配ではないか!これはもはややらない理由がない!剣闘士たちよ!今すぐペンを取れ!」
ワァァァー……再び歓声。
しかし自動生成観客の中に、他と違う反応をとる者らがいた。
「またやるのか?そろそろ終わらせて電子の海に帰りたいだけど」「ちやほやされる喜びを知って舞い上がって」「ところでさ、ニールが負けるのありえなくない?絶対不正だよ不正」
と三人の観客が小さい声で言った。とても珍しい、自我を覚醒した自動生成観客だ。しかし彼らの愚痴を、王の地獄耳は聞き逃さなかった。
グレイウォーターは右手を掲げた。人差し指、中指、薬指を立て、前に倒し、手信号を送った。その直後。
ビュー……風切り音を共に、アリーナの屋上からより三本の矢が飛来!「ごうぇ」軍人志望の青年は眉間を貫かれて即死!「げべ」じゃじゃ馬娘の口内飛び込んだ矢が脳幹を破壊。死!「んごぁ」商人風中年男性の脂肪が分厚い胸をかき分け、矢じりが心臓に到達し大動脈を裂いた。死!
自我獲得観客たちは崩れ落ち、群衆の中に埋もれた。グレイウォーターはサムズアップし、屋上にいる射手それを確認し、射撃姿勢を解いた。プラチナブロンドの頭髪を戦士ポニーテールに結び、表情はディアーナ神を模した仮面を被っているため伺えず。彼女の名はキャロェン、帝国一の弓兵、そして国内外名を轟かす『切り裂き団』のフォースキャプテンである。
フォースキャプテンの働きに満足したグレイウォーターは満足に微笑み、小さい声で呟いた。
「これぞ皇帝特権だ」暴君!
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