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マスク話

マスク、マスクね。みなみの国は現在マスク不足で社会が戦々恐々している。

今までの人生のなかで一番マスクしたのはSARSの時、それと軍に入隊する時だな。

「軍人になってすぐマスクした?風邪ひいたの?ワッハッハ!アクズメさん貧弱すぎ!」

黙れエンジェル。俺はあの時風邪をひいていない。バズから訓練舎に降りてすぐ班長たちにマスクを渡されて付けるようと命じられたんだ。考えてみろ。東西南北から野郎が集まって同じ屋根の下で一ヶ月ぐらい寝るも食事も糞も一緒にする環境だ。誰かが風邪をひいたらすぐ大流行になりかねないだろ?だからせめてマスクで空気を介する感染を防ぐわけ。あの頃はたしか9月中旬、また熱い頃。息苦しいわー、メガネ曇るわーと新兵たちが喚いたが、連長(自衛隊における中隊長に相当する位階)が「諸君の健康のために、食事と入浴、および体力訓練以外の時は常にマスクを着けるように!」と言い渡された。マジかよー、やってらんねー。と新兵たちが更に喚いた。

この頃は兵士が何らかの事故や体調不良で死んでしまったら、マスコミがそれを盛大に報道し、軍が世間の厳しい目で睨まれるので国防部も恐れをなして過剰なほど兵士の体調管理についてさまざまな施策を施した。こうしてマスクを着けたまま訓練が始まった。

初めての射撃訓練、アサルトライフルと防弾チョッキを装備しマスクした上で坂道を2㎞を歩いてやっと射撃場に辿り着く、息が苦しい。班長(軍曹に相当)が「慣れろよ。後で宿舎から射撃場までの道がたのしくなっちゃうぜ」と言った。本当にそうなった。マスクをに慣れると坂道がわりと快適に登れた。そして山を登る間だけ班長が軍歌の斉唱を強要しないので思考を整え、禅めいた時間を過ごせた。なんてこった。行軍が楽しいと思う時が来るなんて。それほど新兵訓練が退屈だった。スマホも持てないからな。俺が大学の時焙った筋力で腕立て伏せ一分間90回を成し遂げMr.ナイティンと呼ばれたのはまた別の話だ。

ちなみにおよそ一ヶ月間の新兵訓練では、マスクをの交換は僅か五回ぐらいだ。防疫の観点から完全にアウトだよな。

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