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過激環境保護団体『オーシャン・クラフター』闘士へのインタビュー

『実家はね、養鰻でしたよ。毎年のシラスウナギシーズンになると、家の手伝いをやらされたんだ。よるの川口で、凍るような風に耐えながら、黒い川水をライトで照らして、目を凝らしてウナギを掬いあげてた』

 とソファに座っている男、オーシャン・クラフター(OC)成員のY氏が語った。顔はモザイクで隠しており、声もボイスチェンジャーによって変えられていながら、物々しくタコとクラゲのタトゥーを彫り入れた両腕を胸の前に組んで、見せびらかしている。果たしてプライバシー保護の意味があったでしょうか。

『ウナギシラスは夜中しか獲れない。だから俺も、寝ずに働かされてたもんさ。ひでえもんです。また12歳の子供っすよ。労働基準法なんてありゃせん。朝になると徹夜労働で重たい身体で学校に行く。そんで学校で爆睡したわ。他にも毎日エサ用を魚をスライスして(中略)』

『あの頃はまた稚魚がよく獲れて、家族がそれなり快適に暮らせたよ。(ゲーム)とか買ってくれたし、俺も大変な時期が一年一度だけだったらやってやってもいいと思った。高二までは』

『俺が高校に入った頃、ウナギの捕獲量が少なくなってきた。プールがさびれて、オヤジが暗い顔して居間で酒を飲んでいた。ほかの養鰻が来ても会話内容が「密漁」「ヤクザ」「チャイニーズ」「飢え死に」など物騒なことばかりえで、悪い予感がした』

 Y氏は感傷的にため息して、ソファに沈み込んだ。両手を解いて、紺色のTシャツの胸にプリントされたOCEAN CRAFTERの文字が露になった。彼はインタビュー直前に腕立て伏せ50回こなしたのでバンプアップしたので胸筋はギンギンしている。

『そして、オヤジは密漁で逮捕された。オヤジの懲役以上に、ウチのブランドが地に落ちた。それからは漫画でよくある話さ、刑務所に入った家主の代わりに、母親と長男がバイドで明け暮れる(中略)俺はこんな生活に嫌気をさし、失業して家を出た』

『漁船に乗った。マグロ漁船。漁業にまた未練が残っていましてね、はい。一度大海原で自分を試してみたかったんです。でもその船もまた密漁やってたんだよ、冷凍庫に隠し部屋作って(中略)若くてアホだったからね、まんまんと賊船に乗ってしまった』

『そしてアーサーさんと出会った』

 Y氏は上半身を乗り出した。口調に興奮が滲んでいる。

『まさにインパクトでしたね。トライデントを背負ってハイスピードクラフトの船首に仁王立ちする堂々の姿。俺を含めて船員たちが大慌てだ。アーサーはトライデントを手に取って、投げた。そして船が火を吹いて爆発した!おかしいでしょう!トライデントだぜ?ミサイルじゃねえだぜ?しかし事実は事実だ。俺は衝撃で海に落ちた。沈んで行く中で俺は海面を見上げた。水面の上は船が燃えて大変なことになってるのに、水面のしたはなんて静だって思った。沈みながら俺は安心感を覚えた。海と一体になったと感じた』

 思い出の余韻に浸っていたように、Y氏はしばらく目を閉じて、10秒経過。

『次に目が開くと、俺は激しくむせた。口の中に血と海水の味がする。目まいが酷い。そして目の前にアーサーさんがいた。「大丈夫か小僧」とアーサーさんが日本語で言った。俺はむせて何もしゃべれなかったけど頭を立てに振った。その時俺は気付いた、彼も全身がずぶ濡れている。意識を失った俺を救ってくれたのだ。命の恩人を目の前に、俺は涙を流した。そして声を振り絞った、なんで俺を助けたと。そしてアーサーさんは俺の目を見た。そして言ったーーお前は海の中で、とても安らいだように見えたからと』

 Y氏は啜り泣きしながら目元を押せえまま一分経過したのでカット。

『アーサーさんに関しては色んな噂がある。シャチに育てられたとか、アトランティスの王子とか、ミッシングリングに当たる海洋性霊長類とか。彼は自分のこと語らない。それはそれで神秘的でかっこいい。俺はアーサーさんに憧れて、OCに入った。今は二つのタトゥーも手に入れたAクラス闘士だぜ』

 Y氏は手を広げてタコとクラゲのタトゥーを見せびらかした。

『海洋資源が減りつつあるにもかかわらず、さらに漁業を拡大した日本人に告ぐ。我々はオーシャン・フューリーの体現者である。我々は平和的解決を望まない。我々が掲げるハープーンはいつでも貴様を狙い定めている!命が惜しくば、地上に籠もっていろ』

 Y氏は右手の親指中指小指を立ってトライデント・サイン、一般的はファックサインと呼ばれるジェスチャーを取った。インタビューはこれにて終了です。

※以上の言論は当局の政治的立場と一切関係ありません。

※この記事はフィクションです。作者の思想や政治的立場を代弁しているかもしれないがあなたが深く考える必要がありません。現実を見ましょう。

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