【軍隊話】クソを恐れる軍人なんてクソ

装甲車の操縦を学ぶために歩兵学校に来ていた。陸軍以外にも海兵隊(ネイビーともいう。訓練がちょっぴり厳しいから自分がスゴイと勘違いして陸軍を見下している、いばりくさった野郎だ)、海巡(領海の護衛、監視、密漁密輸密入国などの犯罪を摘発することが主要任務の組織。海上保安庁のようなもの)からの人間も集まって、キャンパスに戻った気分で毎日充実している。

兵隊は毎日欠かさず掃除する。僕はその日のトイレの掃除当番だった。床と便器を磨き終わって、あとはゴミ箱の中身をゴミ捨て場に持って行って捨てれば終了。

みなみの国は日本みたいにウォシュレットが普遍ではないためケツをしっかり拭けるようにトイレットペーパーは質が頑丈で厚い作りになっている。そして古い建物は水道が弱く、トイレットペーパー数枚で簡単に詰まってしまうことが多いため、使用したトイレットペーパーはゴミ箱に捨てることがほとんどだ。近年は水道や紙質の改善で流せるようになったが、数十年続いた習慣はなかなか変われないものです。汚いですよね。僕もそう思います。

クソが付いた紙を積んだゴミ箱を持って階段を降りるとき、同じ掃除当番の学員の不注意でゴミ箱が落ちて、廊下に中身をぶちまけた。

「ゲーッ!きったねえっ!」
「やばいやばい!」
「誰かトング持ってきてくれ!ほうきでもいい!」
「モップも要るだろこれ」
「くっっせぇーなおい!」

うろたえる兵士たち!そこにある人物が現れた。

「なにもじもじしやがってんだ?装甲歩兵のくせにみっともねー」

ドスが効いた声、引き締まった肉体、精悍な顔つき。外見的に年齢は僕と大差ない。掃除中のため軍服ではなく運動着姿だが、その常人と異なるたたずまいとオーラ。間違いない、僕らのような義務役ではなく、志願役のリアルソルジャーだ!

一日甲兵、終生甲賽*っていうんだろ?たかがクソにビビってんじゃねーよ」

そう言った彼はその場でしゃがんで、クソがついた紙を躊躇いなく素手で掴み、ゴミ箱に入れた。

「あとで手を洗えばいいだろうがよったく本当にしょうがねえな義務役の連中は軟弱でよー」

返す言葉もありません。彼が愚痴るうちに廊下の狼藉はいちおう片が付いた。

「これでよし。あとでモップかけとけ」
「ウッス!」
「ありがとうッス!」
「先輩流石ッス!」

先輩に敬意を表し、僕らは急いでゴミ捨て場に向かった。彼の言葉は今でも忘れない。クソを手で触れるこそ本当のソルジャーだ。僕は素手便器掃除ならできるけど、素手クソとなれば話は別だ。敷居が高すぎる。もしあなたはソルジャー志願なら、今から素手クソの練習をはじめたほうがいいでしょう。素手クソを平気で出来たら、世の中難しいことはないと思いますよ。

*甲賽(ジャーサイ):閩南語で、甲は食べる、賽は糞便の意味です。実際喧嘩などの場合でよく使われる言葉です。クソ食らえ!

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