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【閃光日記】2年ぶりに闘争

土曜日、故地に再訪。

樹林秀泰。雑貨屋、服屋、おもちゃ屋、フードコート、そして最上階にシネマがあって、よく仕事をさぼ……教務的判断に基づいた適切な休憩を取るためにここに来ていた。昨年前までは。ビバリウムとゴジラVS.コングもここで観た。そして両作品の感想文は自分note史上アクセス数の2位と3位を占めている。思い出の場所だ。

中に入るとエレベーターで4Fのおもちゃ屋へ。

funbox、たぶん現在台湾で一番規模の大きいおもちゃ屋だ。俺もベイブレードを買ったり、データカードダスしたりしてよく利用している。そして今日ここでキラッとプリ☆チャンのイベントが開催される。エントリーは現場登録形式、出場できるプライヤーは30名まで。ゲームをクリアしたら特典のカードをもらえる他に、一位のプレイヤーは賞品としてマイキャラをプリントされたトートバッグと栄誉をもらえる。

まずは選手登録だ。時刻は11時33分。登録開始時間は11時30分、店と他の利用客に迷惑かからないようそれ以前から並ぶのことを禁ずると公式ウェブサイトに書いてあるが、すでに結構並んでいる。30分になったとたんに殺到したでしょうか?エントリーできるかちょっと心配になってきた。前に並んでいる連中の中にぎちぎちのカードバインダーやぶ厚いカードケースを持ってただならぬ存在感を放つ人ばかり。この張りつめた空気が懐かしい。

しばらくして、ようやく俺の番だ。イベントのためにやってきたSEGA社員(そう、みなみの国ではキラッとプリ☆チャンの運営はSEGAがやっているのだ)に身分IDを提示し、名前と携帯番号を記入すればエントリー成功だ。No.15か、出番が結構後ろだ。にしても身分IDが必要だなんて用心深い。

イベント開始は12時30分。また時間が結構あるので昼飯を済ませてこようかね。

【DCD時空】

「ハッキリ言おう、キラー。お前に優勝する見込みはなし」
「おいおいおいおい、それって選手を送り出すコーチが言っていい言葉か?」
「事実を伝えただけさ」

楽屋の中、極彩色髪の毛との道化師風の服装が特徴の女ーーだいあがいつになく厳めしい顔で私にこう言った。

「ジュエル4弾が実装して早く一ヶ月、DDCに人生を捧げるガチ勢はすでにRRプリチケを揃えて環境最強デッキを築き上げただろう。キラッとプリ☆チャンを始めて10日あまりのお前じゃ敵えそうにない」
「ほーん」

あたしは欠伸し、リクライニングチェアにさらに沈み込んだ。

「でも、ゲームやるのはDCD筐体の前にいる人間で、プレイヤーの腕次第でジャイアントキーリングもありえなくないーーというわけにはいかないもんね。わかってるよ」

前世の記憶がフラッシュバックする。PRカード、パーフェクトにフルコンボを決めるフード少年。

「DCDはあくまでビデオゲーム、装備の数値が高いければ高いほどいい結果を叩きだせる。勝算がないことは最初から重々も承知さ。それでもあたしは闘争の中で身を置きたい。そこが重要だ」
「なんだ、思った以上身をわきまえているじゃないか?」
「あったりまえよ、何年DCDやってきたと思ってる?そんじゃ……ふぁ~、出番まで長そうだし、あたしは瞑想して集中力を高めるとしよう。んぐぉ……」
「瞑想ってお前、ただの昼寝じゃ」

【現実】

だいあの言うとおりだった。筐体の横でしばらく観戦していた。RRプリチケのコーデ、ユニットメンバーでデッキを固めて、プレイも上手いプレイヤーが次々と高点数を決めて上位に食い込んでいく。俺の卓越したリズムゲームテクニックも何とかならないレベル差。こりゃトートバッグは無理だわ、ガハハ!優勝は望めないと悟った途端に気持ちが軽くなった。恥をかかずにゲームを終わらせて、カードを頂いて週末を楽しもう。ていうか、着替えが自由のDCDで、皆が同じコーデでやってて楽しいか?皆と一緒、皆お揃い、それがもちろん大切なポリシーだけど、違うことやってアイデンティティをアピールするのも大事だと思わないか?思わないんだろうなァ!俺だって同じ状況だったら躊躇なくRRチケを使って場を蹂躙したい!そういうゲームだもんね!

それにしてもキラッとプリ☆チャンは1ゲームが長い。大会モードで色々省略されても1ゲームに大体6~8分かかる。エントリーNo.8に回るまで1時間が過ぎてしまった。No.15の俺が出るまであと1時間待ちってわけ?その間はフードコートでコーヒーを飲んでも時間を潰す?いやでも万が一前の奴が欠席で早めに出番が回ってしまったら?くっ、一刻も油断できんぜ……

俺は様子を見ながら同じ階層でうろうろしていた。No.14の体がでかいお兄さんが筐体から3mの範囲からずっと離れないでいるので状況がよくわかる。おっ、やっとお兄さんの番がまわってきたそうだ。

【DCD時空】

「おう、14番の人が始まったみたいだな。フッス、フッス」あたしはチェアから離れて、ワーミングアップを始めた。「タカラ・トミーに来てから初めての実戦、精一杯やろうぜ!」
「頑張れ、せめて恥をかららないようにね」
「にあ、かかってしまうかもしれん、外の奴はストレスに弱いんだ」
「マジか」
「でも大丈夫。たとえ外の奴がヘマをしても、あたしのパフォーマンスが曇ることがない。そういうシステムだ」
「メタッ」
『エントリーNo.15、キラーさん、出なさい』
「はーい。じゃ行ってくるわ」
「ああ、行ってらっしゃい」

【現実】

今日使うのこれ。

我が戦士の新た姿、note初披露だ。かわいいだろ。

簡単に説明する。これはニコチケという、アクセサリーからシューズまでのアイテムを一枚のチケットに収まった優れものだ。実際着るのは左下に写っている方だが。コインを三枚追加してゲームをクリアすると入手できる、お得。一枚確保しとけば相当やりやすくなるので初心者におすすめ。DCDキラッとプリ☆チャンは日本ではも稼働終了だけど。

試合曲目はCutie Breakin。今週中いっぱい打ち込んだからせめてフルコンボは取れるだろう、のつもりだったが最初のタイミングに合わせてボタンを押すところでミスしてしまい、19949という残念すぎる点数で終了。順位は下から数えた方が早い。恥ずかしいぜ。これが今の俺の実力だ。現実を受け入れよう。

特典ガードと認定証をもらい、排出カードを待ちながら、俺はSEGA職員さんの会話に耳を立てた。

「あと二人で今日はあがりかー」
「ここに派遣されてラッキーだったぜ。俺はこの前は市中心のデパートに行かせたけど大変だった」
「やはり人数が多いか?」
「おうよ、マジで18時までやってたわ」
「ウェー」

SEGAさんもたいへんだね。ちなみに排出に欲しいカードが出た。ああ、充実な一日であった。家に帰ろう、とその前にーー

閃光反省会

試合が終わって、あたしはたいあを連れて午後から営業している居酒屋『戦闘民ワータミ』にやってきた。

「はぁ~生き恥さらしぃ~~!」

重いジョッキでハイボールを呷り、から揚げの口の放り込む。ストレスレスの飲み食いが最高に美味い。

「おい、待てこら」
「うん?なんだ?」

反対の席、コーラを手にしているだいあがすごい睨んでくる。

「なんだってお前、それお酒だよね?」
「ああ」
「なぜ飲んでいる?」
「だいあこそ酒は飲まんのか?ああ、そうか。だいあちゃんはすごいアイドルの立場だから公衆の場で酒飲めないんだな。アイドルってたいへんねー」
「お前もアイドルだッ!ってか年齢ッ!未成年ッ!」
「そっちか。なら心配ない、あたしこう見えて34なんで」
「……はい?」
「データ的存在のあたしに年齢など無意味だから、酒飲んでも法律的に何の問題もない。そっちは……ちゃんと設定があるからあまり自由にしない方がいいか。たいへんねー」
「もういい、この話題は終わりにしよう」だいあがスプーンで山芋のグラタンを掬って、咀嚼した。「にしても惜しかった。せめて2万点取ってほしかった」
「不甲斐ない。すべては外の奴が本番に弱いせいです」
「言い訳は結構。改善策を述べよ」
「はい、とにかく筐体にコインを入れまくって経験を積み、よりレアリティの高いプリチケを集めます。そして次の試合で2万点以上大体と思います」
「志、低っ!」

(終わり)

今回の収穫

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