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Happy! Book! Manking! -Extra- #ppslgr

東京ビッグサイト、場外。

「ドゥオルルル!」テーザー銃を食らったテロリストは痙攣した後にダウン!使用済のテーザー銃、もとい対人ミラクルライトを捨て、ホルダーからもう一本を抜き、向かってくるもう一人のテロリストにトリガーを引いた。バッシュ!

「グワーガガガが!クソ民間人めが!」倒れない!肩口に針が刺さり、大柄のテロリストは電撃を耐えながらつかつかと接近、その手には危険な防弾樹脂盾と重金属警棒、剣闘士めいている。

「抵抗しやがってえぇえぇ!べちゃんこにグゥッ」

 背後からベースボールバットで肩胛を叩き込まれ、テロリストは踉蹌したたらを踏んだ。そこへクレイトンは踏み込み、左掌を繰り出す。

「シューッ!」「グワーッ!」

 ヘルメットのバイザーが破砕!崩れ落ちる巨漢がの後ろにサミーがバットを持って立っていた。クレイトンは盾を拾い上げ、サミーを目掛けにフリスピーみたいに投げた。

「ヒッ!?」

 盾はサミーの顔を横切り、9メートル先に銃で狙い定めていたテロリストに命中!胸部を強打されたテロリストは倒れて激痛に悶える。

「ナイスチームワークだ。サミー」クレイトンはサミーにサムスアップした。

「ハァー……ハァー……心臓に悪いこと、しないでくれよ……」サミーはバットを杖のように地面をついて、脂肪が厚いだらしない胸に手を当てた。「発作してしまいそうだ……」

「もう少し耐えてくれよ」クレイトンはプラスチック手錠で拘束しながら言った。「要キュア者が待っている」

Pre-cure! Pre-cure! Two guys are Pre-cure!
Pre-cure! Pre-cure! Two guys are Pre-cure!

 省予算空間でビッグサイト武者を撃退し、テロを仕掛けた首魁と決着をつけたM・J、R・V、法条の三人が自分のブースに戻ると、すでに数人のパルプスリンガーが集まっていた。

「オウ!みんな無事だったな!さすが強者が勢ぞろいにパルプスリンガーだぜ!」
「うぇーい」
「三人ともお疲れ!」
「アークデウズかっこいい!」
「とりあえず事件が無事に終わって何よりです」
「俺の冴えきったオペレータトのおかげだな。俺はすごい!現代の諸葛孔明!これでぼっちゃリオタク女が俺に惚れ込んでエロいセルフィDMがなだれ込み……」
「スケベ天狗が」
「誰がスケベ天狗じゃーい!」
「ボンボン君もなかなかやるじゃない。今は最初バーに現れた時ずっといい表情ね」
「お褒めに預かる光栄です。レディ」
「あらま、ずいぶんと素直になったわね」

「そいえばA・KとH・M見なかった?」
「また来てないみたいだね」
「おれはここに居る」

 声の方向に振り返ると、ルチャドールマスクを被ったH・Mがいた。その腕には黒いチャイナ服の男のA・Kが抱えられている。A・K顔色は蒼白で、右服の上に針みたいな物が何本が刺さっている。

「オニヒトデ怪人と戦っている時にプリキュアの同人誌に気を取られて、毒針を喰らってしまった。おれが付いていながら……すまねえ……」

「なってこった」
「おいおい嘘だろ……」
「……とりあえずブースの中で寝かせよう」

 R・Vの指示に従い、H・MはA・Kをブースの中に運んだ。

「J・Q、何とかできないか?」
「……難しいね」

 J・Qは鉗子でA・Kに刺さった毒針を引き抜き、ガラスの小瓶に入れた。

「毒の種類がわかるまで迂闊に対処できないうえで、解毒剤を作るとしてもすぐにできることではない。かなり不味い状況じゃ」
「……そうか」

「マジかよA・K……なんてことしてくれてんだ」
「小説だけでなく戦闘においても三流か」
「ここで死んでしまったら大変のことになるぞ」

 パルプスリンガー達の中でA・Kを咎める声が聞こえた。

「オウ黙れやおまえら」声をあげたのはパルプスリンガーの中でも随一のプリキュア好きで知られている灰色スーツのT・D。「H・M、A・Kの目を奪ったプリキュアの同人誌、エロイ方だったか」

「ああ、その通りだった」
「……仕方ないのだ」

 T・Dは歯を食いしり、言葉を絞り出した。

「日曜日の朝、清楚で健全の姿で愛と友情、世に尊ぶものを語る少女たちがいきなりみだらな姿で目の前に晒したらどうなる?釘付けになるに決まっている。君たちだって、推しキャラのエロ同人が目の前にあったら平常にいられると言い切れる?」

「……グッドルッキングガイズの顔が近かったら危なかった」
「根暗ぼっちゃり女がめっちゃエロい表紙だったら今倒れているのが俺かもしれねえ」
「修行が足りないのでは?」
「戦闘中によそ見したやつが悪い」

 同感を示す者が居れば、そうでない者もいた。

「口論している場合ではないぞ」とR・V。「もしこのままA・Kが死に垂れたら、すべての努力は水の泡だ」

 その通り。漫画、ゲーム、アニメといったいわゆるナード向けのコンテンツはポリティカルコレクトを掲げる団体に目の敵にされており、風当てが強い。ナードたちが祭りとして崇めるこのクリエイトマーケットも、なにかの事故、例えば参加者がイベント会場で死亡したとの情報が流されたら、それらの団体が血の匂いを嗅いだサメみたいに群がってくるだろう。そうとなれば世間の圧力に運営が押し負けて、イベントは今年が最後になる可能性もある。

「要は死ななければいいでしょう?」喪服のN・Mが進みでた。「ゾンビパウダーの出番ですね?」
「いや、ゾンビになったら逆にアウトブレイクの可能性が生んでしまう」S・Rは腰に拳を当てて言った。「ここは穏便にミンチにしてトイレに流そう」
「M・Kの力で省経費空間に送るとか」
「T・Dの翠炎で焼き尽くせるんじゃない?」

「皆、何を言っているんだ?」すでにどうやってA・Kを処理するパルプスリンガーたちに対してT・Dは戦慄した。「A・Kだぞ?いつも楽しい小説を書いてくれる仲間だぞ?なんでこんなに早く諦めるんだ?」

 流石はこの間一緒にプリキュアになって戦った仲だ、友情が深い。

「残念ですが、我々誰ひとり一人のせいでイベント中止されたことを望んでいない。A・Kだってそう思っているはずです。A・Kは助からないという現実をに直面しましょう」
「クッ……」

 執事服のS・CはT・Dの肩に触れて言った。

「コボッ」

 A・Kの顔色が白から紫に変わり、口角から泡が溢れ出た。毒素が神経系を侵しはじめたのか。

「苦しそうじゃな」J・Qが沈痛の表情で言った。「決断の時が来たようだ」

「俺がやろう」R・Vはそう言い。コートの裏から護拳が付いた大きなボウイナイフを抜き、A・Kのそばに跪いた。「A・K。済まなかったな。誰もこんな結果を予想できなかった。俺ができるのはせめて、あんたがかっこいいと言ったこのナイフであんたの苦痛を終わらせることだ」

 ナイフの先をA・Kの心臓にめかけ、突き刺そうとしたのその時。

「そのカイシャク、ちょっと待った!」

 大声を出したのは、ひげを蓄えた、いかにもこの場に適したナードっぽい小太りの中年白人男性だった。その隣に腕を組んで仁王立ちしているスキンヘッド白人男性は冬なのに黒Tシャツ一丁で、露出している両腕がフロリダアナコンダめいた太さで、ただならぬ戦闘者であることを語っている。

「どうも皆さん!私の名はサミー、こちらは相棒のクレイトン。我々はPre-cureという自警活動をしています」

「なんだこのおっさん!?」「こっちに来るぞ!」サミ―と名乗った男性がガツガツと歩き、パルプスリンガーを押し分けてブース前まできた。

「時間があまりないので聞いてください。僕はいわゆる未来視の能力を持っています。そしてこの男、A・Kがここに倒れるヴィジョンを二日前に予知した」

「何言ってんだこいつ」「訳の分からないことを吹っ掛けてんじゃ……」

「待て!」T・Dは叫んで、サミーの前に立った。「Pre-cureと言ったか?つまり先を知り、救援する意味の?」

 それを聞いたサミーが逆に驚き、息を呑んだ。「その通り。理解してくれるのか?きみはもしや」
「ああ、プリキュアのファンだ。君たちを信じることにする。R・V!」今度はR・Vに向かって叫んだ。「彼らならA・Kを助けるかもしれない。やらせてみよう!」

「……そうだな」R・Vはナイフを鞘に戻した。「俺だって知人をバラバラにしてトイレに流したくない。何ができるか、最後まで試してみよう」

「ワオ」クレイトンは初めて口を開けた。「やはりプリキュアファンが居たら話が早いもんだ」

「とりあえずここでやるのもなんかなので、彼を外に運ぼう」とサミー。
「わかった、法条は留守番を頼む!」
「了解した。きみたちも全力で友人を救え」

Pre-cure! Pre-cure! Two guys are Pre-cure!
Pre-cure! Pre-cure! Two guys are Pre-cure!

 ビッグサイト、場外。

「僕がプリキュアから学んだこと、それは未来は変えられる、そして奇跡は人為的に起こせることだ」

 今は泡を吹いているA・Kを中心に、パルプスリンガー達が手を繋いて輪っかを作り、輪っかの中にサミーとクレイトンが居た。

「A・K君は未知の毒に侵され、治療が間に合わない。だったらミラクルに頼るしかない」

 サミーはクレイトンに頷いて合図を送り、クレイトンはベルトからテーザ―銃もとい対人ミラクルライトを抜いた。

「いいですか皆さん。ここからは儀式を行います。かなりのカルチャーショックがあるかもしれませんが必ず僕の指示を従いください!A・Kとクリエイトマーケットを救うために我慢ですよ!」

「わかったからささっとやれ!」「視線が痛いんだよ!」

 なり、通行人とコスプレイヤーが集まるこの場所においても、この輪になる集団はとても奇妙で目立つのだ。

「では、行きます!すぅー、ふぅー……」サミーは目を閉じ、深呼吸した。再び目を開けた途端、その瞳は闘志と使命感が宿り、完全なるPre-cure戦士の目になっていた。

「ALL RIGHT EVERYONE JUST GET CONCENTRATE AND FOLLOW ME!」
「「「YEAH!!!
」」」
「ARE YOU READY!」
「「「YEAH!!!」」」
「WHEN I SAY PRE AND YOU SAY CURE!
PRE!
「「「CURE!!!」」」
「PRE!」
「「「CURE!!!」」」
「WHEN I SAY キラ YOU SAY WAR! キラ!
「「「WAR!!!」」」
「キラ!
「「「WAR!!!」」」

 まるで英語教室だ!しかし妙なことに、パルプスリンガーたちからオーラめいた光が発し、輪っかの中心、つまりA・Kの身体に集まっていく!

「効いてるぞ!さあ、イマジネイション高めるのです!A・Kへ思いを重ねよう!」

 サミーが促すように両手を下から上へと煽る!

「A・K、親父に会わせる約束を忘れたか!日本刀で氷とベーコンを割るだろう!」
「一緒に辛い麺・ドーを極めるんじゃなかったのか!?」
「カレンと王子のイチャラブを読まずに死んでいいのか!?」
「皮蛋を奢ってくれるって約束だろ!」
「剣闘小説の続き待っているぞ!」
「ユーシャルホテルの続きも書け!」
「もっとイール食わせろ!」
「発勁しろ!」
「どうでもいい、早く帰りたい」

 イマジネイションが高めて、A・Kを包む光が更に輝きを増す!

「まったく、今回の要キュア者はいい友人を持ったこって」クレイトンはぼやき、対人ミラクルライトをA・Kに向けて、トリガーを引いた。

PRE-CURE TWINKLE IMAGINATION THUNDERBOLT!

「ガグルルルルルル!」ブッズズズズズズ!胸にワイヤが刺さったA・Kが激しく痙攣!イマジネイションの輝きが収束され、心臓から食道に伝って口から吐き出されて光球が空を飛びあがり、爆ぜて東京湾の上空に暗い紫色の円形を作った。円形の中に星模様の図形を飛び交い、渦巻いている。

「それはァ!?フワのワープと同じの……!」「こいつはスゴイことになるぞ」とプリキュアファンのT・DとT・Fが真っ先に反応した。

「で、どうなるんだ?」S・Rは恥ずかしさに耐えながら言った。「まさかこれで終わり?」

「いや、イマジネイションが聞き届かれた」とサミーがポータルを見上げながら感慨深く言った。ポータルの中から一瞬、バイオレット色の閃光が走った。直後、一本の光る矢がポータルから飛び出し、A・Kの胸を射止めた!

「グゥゥワァアアアーーーッ!」

 A・Kは叫び、光る矢がずるずると光の粒子になって彼の身体に流れ込む。毒素が鼻穴から、口から、耳から蒸気になって蒸発してゆく!

 やがてポータルが閉じた。パルプスリンガー達は息を呑んで、A・Kの様子を見守った。

「ゴエーケッホ!ウェーケホッ!タアホ、ベンデホォー!ブェエエエーエスホール!!クホ、クホ!シンオオクボォ!」

 A・Kは激しく咳き込み、上半身を起こした。

「なにがあった……プリキュアのエロイ絵を見てたら急に痛くなって、それから……」
「オウA・Kよかったじゃないか!」H・MはA・Kの頭部を脇に挟んで頭皮をわしわしと撫でた。「心配かけさせやがってよ!」
「ちょっ、痛い!待って!グワーッ!」
「こいつゥ!」
「あとで一人一箱ずつCORONAを奢るよな!」

 パルプスリンガー達が容赦なく蘇ったA・Kの背中を叩いたり、肘で脇腹を突いたり、ローキックで脛を蹴ったりした。ある意味殺され寸前であった。

「A・K、紹介したい人がいる。彼らはPre-cureという……あれ?」

 T・Dは振り返ったが、そこにサミーとクレイトンは既にいなかった。

Pre-cure! Pre-cure! Two guys are Pre-cure!
Pre-cure! Pre-cure! Two guys are Pre-cure!

 首都高湾岸線に、サミーが運転するジャガーXJRが走っていた。

「あのA・Kという男、どうも初めて会った気がしないよね」
「そうか?にしてもあのパルプスリンガーという連中、サミーみたいな特殊能力を持つ奴は何人も居たな。Pre-cureの支障にならなきゃいいんだが」
「もしその時が来たら、クレイトンのクラヴ・マガで一発頼むよ」
「簡単に言うぜ」
「まあそんな心配がないかな。彼らは一応正義の側って感じだし」
「ナチドイツも自分が正義だと思っていただろうな」
「政治の話はなしだよクレイトン。それにしても晩飯はどうする?」
「ブリトーだな。戦いの後のブリトーは最高だ」
「OK。じゃあ、品川で降りるね」
「GYGか、いいチョイスだ。」

(終わり)

スタートゥインクルプリキュア。イマジネイション溢れた一年間、ありがとうね!

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