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エンドレスプラクティス 下

 最後に#逆噴射プラクティスを付けて、公開ボタンを押したら、日課は終わりさ。

 今日は頭に火鉢を乗せてシヴァのテンプルに向かう王族のおばさんを、暴れ象が蹴り殺して、象を鎮めようとした第二王子を鼻で絞殺し、怒り狂って回転刃牛車で駆け付けて来た第一王子を大弓で撃ち抜き、象の神と千年のあとも称えられた話だ。けっこう自信作。

 公開してから10分も満たない内に既にスキが5つ。僕はテンション上がって、ベッドに飛び乗った。「オウイェー!オウイェー!」激しく腰を振る!小説が認められた時の快感がセックスをも勝るぜ!セックスしたことないからわかんないけど!

 精力発散できた僕が机の前に戻り、スキしてくれた人を確認した。あつ揚げさん、お餅作りさん、ジゴクホースさん、umamijiroさん、みそ汁袋さん。またこいつらか?暇だなおい。こいつらは逆噴射小説大賞が始まった時点で推定30歳以上だから、今はもう50歳以上じゃない?そろそろ小説なんかより結婚とか子育てを考えた方が良いじゃない?あっ、嫁さんとお子さんはこの世界に来れなかったっけ?ご愁傷様です。しかしtuxedotenguの野郎、またフォローしてくれないのかよ?いっぱいスキしてやったのによ。 

 僕が次に注目したのは、コメント欄である。

「これはひどいパクリですね……」「バーフバリを汚すんじゃねえぞ」「流石にこれは悪ふざけすぎたな」ひどいな、僕の完全オリジナルのアディアなのに。note公式からの圧力がなくなってからこういうアンチみたいなコメントも増えてきたね。「おまえが考えたネタはもうシンプソンズでやった」理論もしらないのか、嘆かわしいことよ。

 そういえば最近は逆噴射プラクティスを投稿す者も減ってきた。永遠に【続く】十月を見限って、小説をやめて、探索行に出かけた者、他の逆噴射プラクティス者を狩りに行った者……僕から見れば、腰向けばかりよ。プラクティスを棄てることは、真の男になる道を自ら塞ぐことさ。

「いや、おまえは真の男を曲解している」

 ドアの方向に人の声。僕はパパが残してくれたピストルをそっちに向けると、「dhtls」のマークのパワーワードスーツと、カウボーイハットを被った無精ひげの男がいた。

「な、何もんだてぇめーっ!?」数十年ぶりに本物の人と話した僕が吐いた言葉だ。ダっセえー。

「よく毎日やってくれたな、逆噴射プラクティスを...」

「その言葉遣い……貴方はもしやっ!?」

「だがそれも終わりだ。おまえがいるべき世界にかえれ」

「お、終わらせてたまるかっ!帰れってどこにっていうんだ!?」

「さあな」男は背中から赤熱したマチェーテを抜き、僕が構えた拳銃ごと切り裂いた。それは僕が最後に見た光景だった。

◆🌯◆

「はっ!?」


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