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【軍隊話】汝、命(タマ)を手放しべからず

みなみの国の更に南の方へ演習しにいった時の話。

その日は天気が大変よく、陽射しがあってもまた3月なので気温が25℃前後に保っており、絶好の昼寝日和だ。兵士は昼食を済んだあと、近くの玉ねぎ畑の周りに各自の場所を確保し、ヘルメットを枕代わりに頭を預けてくつろぎ始めた。俺は草の土の上だと身体に登ってくる虫などが気になってなかなか眠れないの体質なので、草をむしったりナイフを指でなぞったりライフルについた埃を払ったりして時間を潰していた。

そしたら班長が来た。なんか意地悪い目つきで昼寝してる兵士を見ていた。昼寝という行為自体は悪いわけではない。寝れる時はできるだけ眠ってろと上層も推奨している。問題は寝ている兵士たちの中、ライフルを手放してぐーぐーすやすやしている奴らがいた。

また起きている俺に、班長は口も前に人差し指を立て、シーッのジェスチャーを取った。じゃあしたかねえな。明白な命令的意志がある以上、一等兵である自分は黙るしかない。

班長は音を立てないようにライフルを手放している連中に近づき、M4A1を模した国造アサルトライフルからマガジンだけを抜き取った。へー、そう来るのか。兵士は武器を与えられた以上、保管とメンテナンスの責任がある。そして武器のパーツが一つでも紛失したらどうなるか……正直わからん。俺が短い一年の軍役の中でそんなヘマをしたやつがいなかったので正直どうなるか知らないんだ。でも悲惨なことになると多分間違いはないだろう。

俺は自分のライフルを懐に抱えて、目を閉じて少し休んだ。十数分後、休憩時間が終わった。マガジンを取られた奴らは顔が土色になりながら整列に入った。そして班長が前に出た。

「昼休み中に、銃をほったらかして盛大に寝っ転がった者がいたがー」と言いつつ、没収したマガジンを高く掲げた。マガジンを抜かれた連中の顔が土よりも深く、泥みたいな色に変わった。全員は次回の休暇が12時間減少し、そのうち4時間が労働を課せられたそうだ。

「寝込みで仕掛けるなんて陰険にもほどがあるわ」「演習という高ストレス環境で兵士を追い込むなんて上官のやることではない」「パワハラパワハラ」と兵士がタバコをふかしながら言ったが、俺はそう思わない。

ゲーム・オブ・スローンズの、かなり初期のエピソード、どこかの高貴の出身の娘か剣術を学ぶシーンがあった。初めて真剣に触れた娘は動きがぎこちなく、始終剣術の先生に翻弄されていた。娘は剣を投げ捨て、先生に「剣が重くて持てないよ!」と抗議した。先生がこう返した。

「剣とは剣士の手の延長だ。お前は重たいからと言って自分の手足を捨てるか?」

兵士にとって銃もまた自分の手足同様。そして銃弾が入るマガジンはさながら玉袋だ。銃があっても弾がないと意味が無い。自分から玉袋をさらけ出して、命(タマ)を取られ奴は間抜けだ。

と以上の内容を毎週提出するウイークレポートに書くと上官からの受けが大変良くてさ。特にメリットを得ることがなかったけど。

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