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JOJOと奇妙なイマジナリーフレンド

(ネタバレは極力しない)

ジョハンナ、ニックネームはジョジョ。彼は運動神経は良くないし、人一倍に勇敢な訳でもない。自分で靴の紐も締めれない。
そんな彼には偉大な夢があった。総統親衛隊に入り、外敵とユダヤ人を駆逐し、国を守ることだ。そして彼の親友ーー彼にしか見えないイマジナリーフレンド、イマジナリーアドルフ・ヒトラ一が常にジョジョを励まし、その愛国心を称賛し、彼の夢を応援している。
10歳の時、晴れてナチス少年隊に入るも、初日の手榴弾訓練でしくじった。自分が投げた手榴弾が木に当たり、足元に帰ってきた。
爆発から幸運に一命とりとめたジョジョは左半身に醜い傷跡が残り、足がうまく歩けなくなった。夢が頓挫したように見えた。訓練を受けられず、ショボい雑用を押し付けられる毎日。ある日、早めに帰宅したジョジョは、亡き姉エイガの部屋から音が聞こえた。部屋を探るジョジョは壁の隅にある隠し扉に気づいた。恐る恐る扉を開き、中にいるユダヤ人の少女と目があった。
「えっと……ハロー?」
「うわぁぁぁぁーっ!?」
驚いたジョジョは姉の部屋から飛び出し、階段から転げ落ちた。

主人公のニックネームがジョジョで、自分しか見えないヴィションがスタンディングバイしている。某能力バトル漫画を意識しているようにしか思えない。

2020初めて映画館で見た映画がこれに決めた。おそらく僕が今まで観た中で一番「ハイル、ヒトラー」の映画だった。マイティ・ソー:ラグナロクに続いて、タイカ・ワイティティ監督がまたいい仕事してくれた。

なによりイマジナリーのアドルフ・ヒトラーは監督自身が演じるからね。

やけに親切で、快活の親戚のおじさんみたいなヒトラーは多分映画史上初なのでは?

と、コメディみたいなノリだからって油断してはいけない。本作は立派な戦争映画でもある。ヨーロッパで劣勢になりつつあるナチドイツにおけるひとびとの暮らしの変化が変化する。貧しいながらも一定水準の生活を維持できた町が、連合軍の侵攻によりとんでもない変貌を遂げる。敗戦国がどんな目に遭うのか控え目で描かれている。草木皆兵とはまさにこれのこと。バズーカを撃つババアがでる。

あと、イマジナリーアドルフの出番自体は思ったより多くなかった。アドルフがジョジョの中にあるナチスへの忠誠心と憧れの象徴なら、ユダヤ人のエルサと接している間に、互いの理解が深めるにつれてその存在の必要性も薄まっていくので当然と言えば当然か。無論かなり濃いキャラだしタイカ・ワイティティの演技も素晴らしかったので文句はなかった。イマジナリーアドルフを目当てに観に行った人はがっかりしないはずだ。

イマジナリーフレンドと精神的成長

僕は記憶がある以来、常にイマジナリーフレンドがそばにいた。彼らは姿と名前が入れ替わって、身体が弱くあまり外で遊べない僕の話し相手やストリートファイターごっごを付き合ってくれた。青春期は勉強とかで忙しかったため彼らの存在を一時に頭の隅に置いてきたが、中年になり、日々noteで脳汁を絞る生活のなかで、また彼らが出て来た。ネタに困った時はいつでも助けてくれる。頼り(便利)なやつらだ。きみも心の中で2、3匹飼っておいて損はないぞ。

そしてジョジョは僕と違う形でイマジナリーアドルフと決着をつけ、精神の更なる階段へ昇った。何があったか、映画館へ赴き、ご自分の目で確かめてほしい。

JOJO RABBIT、9.2点。2020最初に観た映画がこんなに面白い。幸先いいね。このままLOVE&THUNDERも決めてくれよワイティティ監督!

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