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灰汁詰めのナヴォー

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2022年7月の記事一覧

ヘッドスキン3

ヘッドスキン3

前回

フィリピン武術界の頂点に立つエスクリマのマスター、ベンジャミン・タイーニャ。彼はかつて弟子にこう聞かれました。

「先生は格闘家以外にどんな職業の人間が一番強いと思いますか?」

タイーニャはしばらく思索し、「美容師だ」と答えました。

「ミリメートル単位でコントロールできる手先器用さ、数時間にわたって途切れない集中力、客と会話しながら理髪をこなすマルチタスク能力、マッサージで鍛えられた指

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ヘッドスキン2

ヘッドスキン2

前回

破門された私は就職することにしました。

最初の勤め先はとあるハイカラのヘアサロンでした。給料が良く、先輩方が親切でホワイトな職場でした。私の技術が発揮されて、一ヶ月ぐらいでお客様から指名をいただくようになりました。けれど私は嬉しくなれませんでした。

ヘアサロンに来るお客様は大部分は女性です。女性の髪型はショートと言ってもスキンヘッドより遥かに毛量が多いです。当然毛量が多いと頭皮の感触を

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ヘッドスキン

ヘッドスキン

人の頭を触るのが好きです。もっと正確に言うと、頭皮を触るのが好きです。

七歳の頃、若くして頭頂部が見事に禿げた親戚のおじさんの頭を触ってから、その滑らかな触り心地、皮脂のにおい、光沢が私を頭皮の虜にしました。私は隙あらばおじさんの頭を触っていました。おじさんはそれが嫌がって、頭を触れるのを禁止した。彼は自分の頭を屈辱だと思っていたようです。

親戚のおじさんがだめなら別のおじさんを探すしかない。

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