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野良猫学級

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記事一覧

野良猫学級 第1話 一番太鼓

あらすじ  児童養護施設で育った川嶋竜也。  ある時バイク事故に遭い、気付いた時には病院…

野良猫学級 第2話 着任

――春。校舎の脇に咲く桜はややピークを過ぎている。時折ぴゅうと吹く風に乗って、ピンクの花…

野良猫学級 第3話 問題児

 初めての十三組の授業。始業の鐘が鳴り、定刻通りに授業へとやって来たのは、半分ほどの生徒…

野良猫学級 第4話 怒

 どうやらおれの見積もりが甘かったようだ。そのいずれが来ないまま三週間が過ぎた。  どの…

野良猫学級 第5話 地に座る

 二日後。十三組の授業が始まる前、おれは誰よりも早く校庭に向かった。  この日の十三組の…

野良猫学級 第6話 クラスマッチは担任の面子を掛けた鬩ぎ合い

「おはよう、タツ兄」、「タツ兄ぃー!おはよー!」  景気の良い挨拶と共に、十三組の奴らが…

野良猫学級 第7話 野良

――夏。四国のここの夏もまた、これはこれで暑い。瀬戸内海に面してはいるが、四国山脈を背にし、海の向こうには中国山脈がそびえているため、山に挟まれた形をとるこの土地は、天候自体がとても穏やかなものである。逆に言えば、雨が少なく、夏でも乾燥しているような暑さに見舞われる。カラッと乾いた暑さで気持ちが良いと言えば聞こえは良いが、例年、水不足という問題はついて回るそうだ。  おれがガキの時分に経験した梅雨などは、それこそひっきりなしに降る雨で歩道まで水没し、長靴の中まで水浸しになりな

野良猫学級 第8話 祭りになると馬鹿が沸く

 体育祭当日、予告通り、奴らはしっかり気合を入れてやって来た。朝のホームルームで教室に入…

野良猫学級 第9話 震災を経て

 体育祭が終わり、翌日からはすっかり気の抜けた、いつも通りの奴らに戻った。キラキラだった…

野良猫学級 第10話 化けると書いて化粧

――秋。山に囲まれた地域なだけあって、季節の変化が景色と共に現れる。強い日差しが深い緑を…

野良猫学級 第11話 ギャップ萌え

 文化祭。朝のホームルームにと教室へ向かったおれは、景気良くガラッとドアを開け、「おはよ…

野良猫学級 第12話 冬はマラソンって誰が決めた

――冬。ここはあまり雪が降らない。夏同様、いや、より一層乾いた空気によって身が凍え、ただ…

野良猫学級 第13話 先生

「てめぇらこのままじゃあ、ディズニーランドなんか行けねぇぞ!」  進級判定会議において、…

野良猫学級 第14話 若さとは後ろを振り返らないこと

 週明けには、なんとか全員が各教科担当から課題の合格を貰うことができた。最後まで残っていた杏子も土日の間で課題を仕上げてきた様で、期末試験から一週間と少し経って、ようやっとクラス全員の進級が認められた。無事に進級も決まり、いよいよ皆で揃って目でたく春を迎えることができる。  校庭に出ると、向こうに見える桜の花は五分咲きといったところ。今年も入学式まで持ってくれれば良いがと思ったのだが、次の四月にはもう、おれはこの学校にはいないことを思い出した。来年以降、もうこの先見ることの