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まだ『メイズ・ランナー』で(ry

映画『メイズ・ランナー』は2009年公開の映画。小説版はそれより早くでていて、三部作で既に完結済み(四作目も過去編として出されている)。日本ではメイズランナー2まで出版されている由。

で、映画の『メイズ・ランナー』、アメリカでは2014年公開。日本では2015年5月に公開された。三部作の最初で、二作目はそろそろレンタル開始。三作目はまだ影も形もありません。

どんな話?

人類が太陽のフレアとウイルスによって存亡の危機を迎えた未来。トーマスは目を覚ますとエレベーターの中にいた。上にあがって見たものは、子供達だけの小さな社会。周囲を迷路で囲われた小さな社会だ。一日の昼間だけ空いている迷路へ入るものは「ランナー」と呼ばれる……。

 『メイズ・ランナー』の存在を知ったのは最終兵器俺達というゲーム実況者たちのマインクラフト動画だった。一瞬だけ話題が出ただけなのに気になって見てしまうというのはそうね、ゆがんだ……ファンの心/// という奴なのかもしれない。多分ちがうけどきっとそうさ。

 2015年そこそこ話題になった映画だけあって、謎に満ちた設定といいスピード感溢れる展開といい、王道の「脱出物」らしい勇気と決断にみちた行動といい、けっこう普通に面白い。夏休みジュブナイル映画として見ればけっこう得した気持になれるだろう。

 日本の小説のカバーはなかなかいいと思う。

 設定としては「極限状況に置かれた子供達に大人が試練を与えてにやにやする」というよくある話だ。古くは大江健三郎『芽むしり仔撃ち』、ゴールディングの『蠅の王』。ドラマではもう15年ぐらい前になるのかな。『未満都市』っていう堂本くんが主演したやつがあったなぁ。

『メイズ・ランナー』はそうした子供達の閉塞極限ものに加えて「迷路」というガジェットを持ち込んだことがよい。あと変な化け物ね。その二つだけでかなりおなかいっぱいだ。やや魅力に乏しい主人公(脇役のほうがかっこいい!)といい、おてんばだけど思ったほどは活躍しないヒロインたちのもっさりした芝居をカバーして見るべきものがたくさんある。

 中でも、とにかく村を取り囲む巨大な迷路の映像は特筆に価する。ただ走り抜けるだけの空間ではなく、絶望的に広大で、しかも廃墟のむなしさと神聖さすら感じる幾何学的なコンクリートは神殿のようですらある。すさまじい高さの壁が、機械仕掛けのギアでもさもさ動くシーンといい、斜めに空いたブレードががちゃがちゃ動いて、通路になるシーンといい、男心をぐっとつかむ。蜘蛛みたいな怪物が動きまわるのもなかなか怖くて、その注射を打たれると気が触れてしまうという演出も、じわっと怖ろしい。でもホラーというほどでもなく、グロテスクな描写も多くはない。

こまけえことはいいんだよ!

という話なのだけれど、人間ドラマの残酷さや若干のご都合主義を割り引いてもシナリオには相当な説明不足と矛盾が生まれている。そのせいで迷路のスケール感がよくわからなくなってしまったり、怪物が動き回れる範囲も迷路の中だけなのか、外も含むのか、そもそも村は安全なのかどうかもわからなくなってしまう。思わせぶりにでてくる「墓場」も結局なんだかよくわからない。

なによりも、この凝りに凝った設定のおかげで「なぜ子供達が閉じ込められているのか」についての種明かしが十分な説得力をもてなくなってしまっている。ここまで巨大な施設を作っておいて、脱出のタイミングでわざわざ新鮮な死体を準備した……の?

しかし、それはそれ、とにかく見所は前半の子供達の社会と、ちょっとだけかわいい動物たちもいるすてきな「子供達の村」の姿なんだよ。

こまけえことはいいんだよ! 人生と一緒だよ、迷路を走り抜けやがれ!

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