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推薦と発掘

ディグる。CD屋やレコードショップで延々と、探すような、探さないような、ひたすらジャケットを見ている人はディグっている。そこは店ではなく鉱脈で、鉱脈であるかぎり巨大な金鉱を探している。つるはしは我が目一つだ。それまでに蓄えられた知識とセンスを頼りに、カチン、と音がしたら、その音源を買う。

あとは野となれ大和撫子!

ディグの時代の思い出話の先には、サブスクリプションの時代がある。そこでは毎日大量の「プレイリスト」が作成されていて、僕らはそのプレイリストの中にある曲が〈最新〉だったり〈アンニュイな朝にうってつけ〉だったりすることを知っている。そして嫌なら聞かなきゃよい。

サブスクリプションサービスは明らかに人を飽きさせるバイブスがある。ちょっと遊んでつまらなかったらやめたくなるし、ちょっと聴いてだめそうならもうやめている。あれほど聴きたかった無限の音源は、むしろ巨大な退屈の加速器になってしまった。

レコメンドという機能に力をいれはじめた2002年代において、私たちはみな趣味の申し子だった。それぞれの人に色があり、色に応じて趣味があった。その趣味はようするにお金と時間が有限なのでソレっぽいテイストの何かで着飾っただけだったが、皮膚のようになじんでいて、それ以外のものを受け付けないぐらいだったように思う。そんな皮膚を愛していた。

それが溶けてしまったときに、僕らはどう振る舞えばいいかわからない。ラップもユーロビートもディスコも民族音楽もなんでも好きな曲が目の前にある現在の中で、それでもぼくらはそれを愛していきている。

ただ、そのCDが手に入りにくかった頃のアコガレを思い出してみただけで。

昔のことや未来のことを考えるための、書籍代や、旅行費や、おいしい料理を食べたり、いろんなネタを探すための足代になります。何もお返しできませんが、ドッカンと支援くだされば幸いです。