ノエルの夢とか

「私をはげますもの」といって、がらくたを列挙する小説が思い出せない。 

 ラボジェンヌ「ノエルの夢」を観に行った。横浜人形の家の階上にある「青空劇場」で開かれたお芝居。

 今回で最後になるかも、と言われたのもあって、足を運んでみたのだった。

 ラボジェンヌは働く女性たちによる演劇団体。いわゆる「劇団」よりも形態的には「サークル」とかに近いものを想像するかもしれないけれど、優れた俳優たちがいて、優れた脚本があって、みんな、これでフルタイムで働きながらの舞台なのだから、ふつうにすごい。

 なんだかんだでラボジェンヌの舞台はほとんど観てきたしまったぼくだけれど、舞台から受ける「感じ」は初期からずいぶんと変わってきた。それは演技や演出の変化ではなくて、年齢や生活の変化と共に変わるふつうの人のふつうの変化だと思う。

 就職したり、結婚したり子供ができたり、働き始めたり、子供が話すようになったり、めまぐるしく変わっていく「日常」の変化をラボジェンヌのメンバーたちが受け止めてきた。

 ・・・・・・なんかお父さんみたいだな、書き方。

 そういうのを抜きにしても、今作はおもしろかった。ブライダルサロンを舞台に、ブライダルサロンではたらく女性達の姿や、婚活で結婚相手を見つけたけれども上手く相手を好きになれない女性、その友達のオタク女子。育児の息抜きに遊びにきたけど子供が気になってしかたない気弱な女性と、その付き添いできている子供ができない女。

 子供を預けて休むことの罪悪感や、女同士の友情の難しさ、仕事を巡る女性のありかた、自分の過去との向き合い方を丁寧に描いてる。

 どのシーンも見応えがあったけれど、圧巻だったのはサウナでの大げんかの場面で、赤ちゃんを抱えている女の孤独と、子供ができない家族からのプレッシャーという苦痛がぶつかり合う二人の喧嘩は・・・・・・なんだか見慣れたシーンだったような気もするけれど(笑)、男性には割り込めない激情そのものを突きつける。

 舞台上は全員女性で脚本も女性。それがまたよい。オタク女子カラオケでの盛り上がり方とか、ドレスを着てるのになみだでぐしょぐしょになってしまうところとか、仕事で周りに頼れない弱さとかが異常なほど生々しい。

生々しい、とはこういうことだ。

「働く女性」の上澄みだけをキレイにくみ取って、美人であることとか、ミスしないこととか、男性みたいに振る舞うこととか、子供を育てることと仕事を両立させることとか、いろんな事柄を宿命や使命のように押し込もうとする社会に対して、現実と、自分たちの理想を見せつけたかったのだろう。

 舞台はそういう遠回しな告発にうってつけなのだった。

 細かい点での瑕疵もあるし、以前よりも明らかに練習する時間がなかったのだろうと思うシーンもあったり、オープニングアクトもスッといかなかったりと出演者も肝を冷やしていたかもしれない。

 でも、ああ、こうやって一つずつ飲み込んでいくんだなぁと人生についていろいろ考えさせられた。女と男は体の仕組みがまったく違うから、同じ「人生」という内服薬も、その飲み込み方が違う。

 俳優たちの中では、メインメンバーの二人がやはり演技力で突出していた。一人はお腹に子供がいて、安定期とはいっても舞台に立っているのはまさに気迫、いた感じで、いままでみてきたなかでも一番いい芝居をしていたと思う。随分まえに『偽善者日記』で見たときのような悲劇性と、明るいほのぼのした空気感のバランスがとれていて、ああよいなあ。お母さんになっても、元気でやってくれていたらうれしい。その相方のあに子も、舞台から離れてどんどん上手くなっていく。きっとこれは仕事で鍛えてきたのだろう。

 二人とも、それから出てきたみんな。舞台をやってきたことを誇りに思ってていくことをねがう。

あと、小さい子供が二人でていた。一人の主人公だけが見える過去の自分という役柄なのだけれど、やっぱりかわいい。日替わりゲストは兼枡綾。アイラブニューヨークのTシャツを着る彼氏の話は笑った。わかるわかる。

別の日にはモンゴルも出ていたらしい。モンゴル回も観に行きたかった。

***

キンプラをみた。

正式には「KING OF PRISM -PRIDE the HERO-」という。女児向けアニメの「プリティーリズム」の男の子版映画の二作目。6月公開だったからほぼ半年遅れで見たのだけれど、感動的な前半部分と、全てを破壊する後半のどちらもが自分の予想を超えていた。正直まだなにも受け止められない。というか、どういう話だったのかもあまり記憶がない。

なので、何がすごかったのかは全然言うことができない。断片的にいえば、このハゲ―! があり、「これが法月仁のやり方だ魔神英雄伝ワタルであり新世紀エヴァンゲリオンでありネテロとHUNTERXHUNTERであり、おそらくは本編の「プリティーリズム」と深い関係のあるセリフがあった。腹筋爆撃があり鋼のシックスパックがまたしてもパリーンであり、民衆のためのプリズムショーがあり、僕が生まれて王が爆誕してプリズムの天使が「がんばるじょい!」ってなる。

すまない、まだ混乱してるんだ。

かつて「キンプラ見に行こうかな―」とつぶやいたら「あなたは地球の色を知っていますか?」とリプライが来たことがあり、こいつは頭がおかしくなったのではないか、と僕は内心おもったのだけれど、違った。

あたまがおかしかったのは僕だったのだ。

それから「プリズムの煌めき」というものを見てしまったので応援上映に行ったのだけれど、応援上映はもうすでにあまり人がいなかった……。にも関わらず、もうぼくはEZ DO DANCEを武内君が歌ってる以外のバージョンを思い出すことができない。

どちらの作品ももう一回観に行きたい。





昔のことや未来のことを考えるための、書籍代や、旅行費や、おいしい料理を食べたり、いろんなネタを探すための足代になります。何もお返しできませんが、ドッカンと支援くだされば幸いです。