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書道の面白さに気がつくかも!?マンガ『とめはねっ! 鈴里高校書道部』

公立美術館の多くは、著名な芸術家たちの作品を常設展示すると共に、美術団体や学校など、一般市民が作品を展示する機会(スペース)も提供しています。

そうした展示について、「美術館だから絵画が多い?」と思いがちですが、実は一番多いのは「書」。東京都美術館の2020年12月公募展カレンダーによると、13ある展覧会の内、書道関連が7つ。2021年1月に至っては、16の内で11もあります。

実際、「書」の展覧会を見てみると、出品者などの関係者は熱心に見ていますが、たまたま入ったと思える入場者は、そそくさと去っていきます。書体によっては、そもそも知識がないと読めない作品も多いからでしょう。一般の人たちにとっては、難解な現代美術に近いのかも知れません。

そんな「習字と書道の違いがよく分からない」「書道の何が面白いの?」という人たちにおすすめなのが、河合克敏さんのマンガ『とめはねっ! 鈴里高校書道部』(全14巻)。『帯をギュッとね!』『モンキーターン』と、毎回全く違う分野でヒット作を生み出してきた河合さんによる書道マンガの傑作。

脅されて書道部に入部した大江縁と、だまされて書道部に入部した望月結希。一風変わった先輩たちに翻弄されて、これでいいのかと思う日々。それでも、ダイナミックでデリケートな書の世界は、かなり魅力的で… 文化系青春コメディー。

カナダからの帰国子女設定の主人公・大江からは外国人的な視点、柔道との二刀流を目指すヒロイン・望月からは初心者の視点が持ち込まれることで、書道の入門書としての機能を果たすと同時に、大江の祖母やその恩師・三浦清風など周囲のキャラにより、書道の奥深さまでキッチリ描かれます。

といっても、あくまでコメディ(しかもラブコメ要素あり)。書道についての真面目な話や、文科系部活としての熱い部分を盛り込みながらも、シリアスとギャグを絶妙なさじ加減で描き、グイグイ読者を引っ張っていきます。

ちなみに、2010年には朝倉あきさん主演でNHKで連ドラ化されています(主人公が大江から望月の設定に変更)。こちらもなかなか面白いのでおすすめです。

マイナー部活ものマンガという分野で、作品としては『ちはやふる』より完成度が高いと思われる同作。書道人口が激減している昨今(2010年が540万人→2019年が200万人)、書道界の至宝ともいえるこの作品を、もっと活用してもいいんじゃないかな。


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