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映画ノート

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気になる新作や思い出の映画についての覚え書きです。
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2020年12月の記事一覧

ハッピーエンドのその先は…実写映画『耳をすませば』

今年の秋ドラマは、暗い社会状況もあってか、『35歳の少女』や『姉ちゃんの恋人』など、ハッピーエンドが多かったという指摘があります。基本、連ドラは、バッドエンドの方が少ないとは思いますが、やや強引だったり、現実味が薄かったりしたせいでしょうか。 「その後、お姫様と王子様は幸せに暮らしました。めでたし、めでたし」という昔話の類は、一応「結婚」を持ってハッピーエンドと定義しているわけですが、現実世界ではその後も山あり谷あり。バッドエンドに終わることも少なくないわけで。 結局のと

ソフトSMが浸透 映画『ナインハーフ』(1986年)

先日、スポーツ紙の記事の見出しに「同棲女性に手錠や首輪」というのがありました。当該案件の実態がどうであったかは不明ですが、一般論でいえば、同意なき拘束は「逮捕・監禁罪」でしょうし、両者の合意の元であれば、単なる「性的嗜好」ということになろうかと。 といって、合法的な「性的嗜好」であっても、それに対する社会の許容度は、時代や国によってさまざま。例えば、チャップリンが離婚裁判で、妻から変態行為と非難された「口淫」は、現代日本では一般化していますが、ハードSMとなるとまだまだハー

ロングラン映画『ゆきゆきて、神軍』の衝撃

『鬼滅の刃』が映画興収300億円突破まで、『千と千尋の神隠し』(2001年)の253日を大幅に更新し、歴代最速の59日だったことが話題ですが、『千と』の上映期間の長さも気になって調べたら、1年以上のロングランだったようです。 近年の映画の上映期間は、平均的には1か月ぐらい、人気がなければ2週間で打ち切り。ヒットの程度に応じて、2か月以上ということもあります。ちなみに、歴代最長は、アニメ『この世界の片隅に』(2016年)の1133日。 ミニシアターブームが起こった1980年

女性客が押し寄せた映画『エマニエル夫人』(1974年)

最近始まった葵わかなさん主演の『年の差婚』では、冒頭から男性経験のない主人公(葵さん)が、江戸時代の書物を読みながら、「床入り(初夜)」について学んでいる描写があります。 映画『この世界の片隅に』(2016年)では、主人公のすずが、祖母から結婚初夜の作法を教わるのですが、それは「床入り問答」の一種、「傘問答」。全国的には、他にも「柿の木問答」などのバリエーションがありますが、いずれにせよ、処女が前提の当時の女性は“受け身”な立場。 そんな“受け身”を強いられていた女性たち

高校ガールズバンド×ブルーハーツ『リンダ リンダ リンダ』の化学反応

フジテレビのFODオリジナルドラマ『時をかける バンド』が、現在Tverで配信中です。未来からやってきたという音楽プロデューサーが、3人組の“ポンコツ”ガールズバンドをプロデュースしてゆく青春×SF×音楽ドラマ。 バンドメンバーの一人を演じている、白石聖さん推しなので見ていたのですが、なかなかの秀作。メジャーデビューを目指すバンドと音楽業界の裏側も描きつつ、プロデューサーの秘密と愛が切ない。主題歌が今年、津野米咲さんが亡くなったガールズバンド・赤い公園というのがまた…。

2020年映画賞の行方

全米の映画館が閉鎖されるなど、散々だった2020年の映画界。ハリウッド大作も次々と公開延期となり、3大映画祭の一つ、カンヌ国際映画祭も通常通りの開催を断念。 欧米に比べると感染者が少なかった日本。『名探偵コナン』『るろうに剣心』など、公開延期作品も少なくないとはいえ、『劇場版 鬼滅の刃』のメガヒットなど、明るい材料も。 日本の映画賞は、「日本アカデミー賞」「ブルーリボン賞」などの発表がある2月が本番ですが、前哨戦となる「TAMA映画賞」や「報知映画賞」などはすでに発表。来