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第18回 おっとい田の神

こんにちは、阿久根市地域おこし協力隊のチャーリーこと濱田です。
今回は山下にある久保下のたのかんさぁにスポットをあてたいと思います。
このたのかんさぁは天明7年(1787年)に作られたものでほっそり美人の女性像。毎年旧暦10月の最初の丑の日に化粧直しがされ山下の田んぼを見守ってくれています。

優しい表情の久保下のたのかんさぁ


こちらのたのかんさぁ、かつて盗まれたことがあります。それは明治中期の頃でした。
ある日台座だけを残して御神体が無くなっていました。
周囲を探しても見つからず何者かに持ち去られたんだと地区の人は非難し、その年が不作になるのではと動揺を隠せません。探せど見つかる気配もない中で誰かが「どこかの村に一時盗まれていずれまた戻るだろう。盗み田の神はご利益が多いそうだから」と言い出し、人々もそうかもしれないと言い次第に騒ぎも落ち着いていったそう。

そして翌年秋、地区の区長宛に一通の便りが届きます。差出人は串木野村のとある地区。
「田の神を無断でお借りして2か年を過ぎた。誠に偉大なご利益のある田の神さんでお陰で連年豊作に恵まれ、地区民一同感謝している。無断とはいえ、当方の一方的な2か年の年季も経ったので来たる某月某日、田の神さんをお返しに伺いたい。」

この便りを受けた山下地区に再び田の神の話題が盛り返します。盗まれて怒るやらご利益が証明されて喜ぶやら。ただ返還されるとなって次第に住民の気持ちも変わり、何か催しをして田の神と串木野からの付き添い人を迎えようということとなりました。

そして返還当日、青年団が草相撲を催して待っていると牛車に紅白に縁取った祝い旗を立てその上に田の神が鎮座し数人が付き従っていました。その牛車には神酒と米俵一つが積まれていました。山下の人々は万歳三昌で喜び、その日は串木野村の人々と夕暮れまで互いに歓談し合ったそうです。(参照:阿久根のむかしばなし)

このようにご利益のある田の神を盗んで一時的に借り、ご利益があったらまた元に戻すという慣習を「おっとい田の神」と呼ぶそうで、おっといとはおっとる(盗む)の意味があります。

盗むことを慣習としていることがびっくりですね。窃盗じゃないか(笑)
盗まれてから必ずしも戻ってくるわけではなかったそうなので久保下のたのかんさぁは本当にご利益がありそうですね。
久保下からほど近い山下馬場のたのかんさぁも同じくお化粧がされていますのでよかったら合わせて見に行ってみてはいかがでしょうか。

ユーモラスな表情の山下馬場の田の神

こちらはなかなか場所が分からなくてようやく見つけたと思ったらこの表情だったのですごく気が抜けました笑

☝️久保下のたのかんさぁはこちら

☝️山下馬場のたのかんさぁはこちら
次回は【脇本の白山神社と大漉古墳】をフシギ発見🕵️

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