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映画「ミッドナイト・イン・パリ」

原田マハさんの「たゆたえども沈まず」というゴッホを題材にした小説を読んで以来、ゴッホや西洋美術というものに関心を寄せるようになりました。本当にミーハーなんですけど、ゴッホが好きになっちゃったんですよね。
そしてこの映画のポスターは、ゴッホの「星月夜」という作品をモチーフにしたもので、星月夜の世界に主人公のギルが歩いているというものでした。ミーハーゴッホ好きの僕としては、あれ?これゴッホの絵じゃん、ゴッホの映画なんかな?おもろそうっていうくらいの知識で観てみることにしました。

いやゴッホ出てこないんかい。おれけっこー待ってたよ。物語の終盤、19世紀のベルエポックの時代にタイムスリップしたとき、おーゴーギャン出てきた、あーーじゃあ次ゴッホでしょ?とうとう来るんでしょ?やっぱゴッホの登場こんな引き延ばすかあ、ゴッホすげえなあ、まだかなまだかなあって、目キラキラさせながら待ってたら終わったわ、映画。面白かったから別にいいけども。わりと良いレストランいって、メインディッシュでステーキ頼んで、それまでに前菜とか色々食べて、おいしいねえっつって、あれっでもステーキなかなか来ないねえとか言って、まあもうちょいしたら来るかって待って、あれあれほんとに遅くない?一回店員さん聞いてみよっかって、聞いてみたら、いやステーキ注文入ってないですねって言われた感じ。何を待ってたんだおれずっと。まあ面白かったからいいんですけどほんとに。
でもこの映画、ある程度の西洋美術の知識がないと楽しめないやつですよね。僕自身も、名前くらいは知ってるなあっていう偉人であろう方々たちがどんどん出てきて、別に全然「おっ!!」ってならなかったから、多分この映画の100%楽しめてないんだろうなって感じはしました。

ざっくりあらすじです。作家の夢を追う主人公のギルが、婚約者とのパリへの旅行中、真夜中12時の鐘の音を聞くと、憧れの1920年頃のパリにタイムトラベルして、んでまあ色々あって、のちの偉人となる芸術家たちとの交流していく。あーあ、あの時代に生まれてみたかったなあ、という誰しも一度は考えたことがある想像を具現化したような作品でした。

いやあギルの婚約者すげえ嫌でしたねおれ。
アドリアナとギルのバーのシーンで、ギルが婚約者について話をするところがありました。ギルはイネスについて、些細なことでの意見は一致するんだ、ただ重要なことに関しては価値観が違うんだけどね、でも2人ともインド料理が好きなんだみたいなことを言っていましたね。この感覚すごい分かります。気が合うんだ、そう思ってしまいますよね。特に付き合いたてのときなんて。どこいこっか?とか何食べよっか?とかそんな些細な場面においては、意見が割れることって意外とないんですよね。もし割れたとしても、基本的には譲り合えますよね。でも別れの原因の代名詞的存在「価値観の違い」。この部分て簡単に譲り合えるもんじゃないんですよね。価値観て、自分にとって、何が大事で何が大事でないか、自分の中の優先順位みたいなものだと僕は思っています。
もし自分が大事にしているものが、相手にとって大事でなかったら?悲しいですよね。
きっと、その日の夕食を共にすることはできても、人生を共にすることはできないんだと思います。

パリを観光中、突然雨が降ってきました。雨のパリを散歩するという行為に憧れを抱くギルは、歩いて帰ろうと提案していました。イネスは、濡れるのが嫌だから車で戻ろうと言います。車があるのにわざわざ濡れて帰るなんて素敵でもなんでもないというイネスの気持ちも確かに理解できます。ただギルにとっては、車で帰ることよりも雨のパリの街を歩くことの方が大事だったのです。
 対照的なラストシーン、ギルとガブリエル。突然の雨にさらされたガブリエルの「濡れても構わない。パリは雨が1番ステキなの」というセリフ。
なんか、うまく言葉にできない自分が悔しいんですけど、
そういうことなんだよなぁって思います。
ギルだって、自分が言ってることが無茶苦茶なの分かってるんですよね。自分が大事にしているものはきっと誰にも分かってもらえない、でも同じように、それを大事だと思える人がいた。あの時のギルの顔、すごい嬉しそうなんですよね。恋に落ちちゃう瞬間って案外そういうものだったりしますよね。
ガブリエルほんと良いなあ。シンプルに顔が好き。

ギルのように、現代に生きづらさを感じる人って多いですよね。それでもどうにか現在を生きないといけないわけで、作中でも、ギルはポールに懐古主義を批判されていましたね。現実を見ないといけないことなんてみんな分かっています。ただそれでも未知なる時代や空想に夢をみてしまいたくなるときがあります。でも、不満だらけだって思う現在だって、未来人からみてみたら、黄金時代かもしれないし。そんな風に思えたらちょっとだけ現在が素敵に見えてきますよね。でもそれでもやっぱり人生なんて不満だらけなんだから、あわよくば、同じ時に同じように喜びを感じられるような誰かと出会えたら、最高ですよね。

美術もっと詳しかったらなぁっていう後悔がありますね。正直、理解が自分でも不十分だなって思います。ウディアレン強い。ルイス・ブニュエルの『皆殺しの天使』とかの小ネタも全然分からなかったですし。
でもそれでもすごく面白かったです。パリの空気感も味わえるし、美術好きにはぜひお勧めしたい作品でした。


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