「ボケまくる貴方がだるかった」

今日、6年付き合った彼女とお別れしました。
夕方頃、家のインターホンが鳴り、扉を開けると泣いている彼女。
「どうしたの?」と聞くと『別れましょう』と一言。
布マスクの目元あたりが涙でシミになっていました。

お互い忙しく、ここ半年くらいはほとんど連絡も取っていなかったので
薄々気づいてはいましたが、やはり大学の頃からの仲だったので色々と
募るものがありました。

今までの思い出を話して、お互いに反省して、お互いに感謝して
円満なお別れになったと思います。

すっかり涙も引いて落ち着いたところで
『そろそろ行くけど、最後に一言だけ言わせて』


『ボケまくる貴方がだるかったです』
彼女は笑っていました。


彼女を見送ってから、しばらくして夕食をとっていました。
半年以上も連絡をとっていなければ、気持ちはほぼ別れた同然で
悲しい気持ちが湧くのかすら疑問に思っていましたが、しっかり涙はこぼれました。先の見えない人生を選んだのは僕ですし、
覚悟の上ですから後悔もありません。


ただ一つ、『ボケまくる貴方がだるかったです』と言った笑顔の彼女がずっと頭に残っていました。


思えば付き合って初めてのドライブデートの時、当時テレビで流れていたウィルキンソンのCMの発音を完璧に再現すると言った僕が、
千葉にある公園までの片道2時間ずっと「うぃうきんすん!うぃうきんすん!」と叫び続けて彼女に採点させていた所から間違っていたのかもしれません。

あの時は有難う。無理やりキミにも「うぃうきんすん!」って言わせてごめん。


お台場に向かうドライブデートの時も、ポケモンXのポケモン厳選で徹夜し
おかしなテンションになった僕が、「ポケモン言えるかなBWバージョンで本家のつるの剛士を超える」と言って片道1時間歌い続けていた事もありました。

あの時は有難う。ルビサファ以降の世代を知らないキミにイッシュ地方のポケモンの名前を聞かせ続けてごめん。


初めて伊豆に旅行に行った時、事前に二人でルナルナを見ながら生理周期を確認したのに、旅行二日目に女の子の日になってしまい、少し気まずい雰囲気になりましたよね。
あの頃、僕なりに気を利かせてキミに言った冗談
「全然平気だよ。それよりキミの経〇で、でユッケジャンスープを作ろう!」が二人の気まずい雰囲気を加速させましたよね。

あの時はごめん。僕も言った直後に後悔したけど、キミは辛いものが好きだったから、もしかしたらウケると思って試してみたくなりました。


石川県に新幹線で旅行に行った時も、僕が張り切って作ったしおりにちりばめたボケに全てツッコミ終わるまで幕の内弁当を没収するというよくわからないツッコミ鍛錬を行っていましたね。

あの時はごめん、必要な部分をまとめたら3ページに収まる量だったのに、偉人の名言集とか、石川県にリオレウスが出てきた時の対策法なんか、無駄な要素を詰め込みすぎて20ページくらいになっていたよね。
「まじでうざい」とか言いながらも、最後までツッコミを入れてくれて有難う。

ヒントは出したけど「斎藤茂太の右目にヘミングウェイ入ってる!」まで拾い切った君には頭が上がりません。


僕が龍が如くにハマったら一日中、真島吾朗の声真似で話続け、
僕が絶体絶命都市にハマったら一日中、壊れゆく首都島から逃げる主人公の真似をし続けました。
これはもうボケではなく新種のハラスメントです。

思い返さずとも僕は彼女の前でやりたい放題のダメ人間でした。
ほぼずっとふざけてました。「うざい」と言われれば、うざいの向こう側に連れてってやろうとふざけに拍車をかけていました。


当時はたまに本気で怒ってる時もあったし、恐らく本心だったんだと思う。
だけど、最後にはギリギリいい思い出として認定印を押してくれたのかなと、笑顔だったキミを見て僕は思いました。


本当に有難う。
キミが次に好きになる人が、お笑いを見る専の硬派な公務員である事を、心から願っています。


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