暗がりには蓋を

最近ふとした瞬間に井戸の奥底にいることがある。
自ら降りる時は底の淀んだ空気やらは僕の周りを漂っているだけだ。
しかし今は違う。
彼らはどろどろとしていて僕に纏わりついてくる。
どれだけもがいたって離れない。
感情を無にしたところで解放なんてなかった。
ただじっと身体を丸くして座っていることしかできない。
彼らが僕の身体から少しずつ離れていくのを待っているしか。
時間の流れがひたすらにゆっくりに感じる。
誰の手助けを受けれないこの空間で僕は僕が消えてしまうのを待ってしまう。
そうやって本当の奥底に沈んでしまったとき彼らはやっと僕を解放する。
そうなれば僕は井戸の出口に向かって登っていく。
ゆっくりと時間をかけて現実の空気に身体を慣らしながら。
時々煙草を吸って自分を落ち着かせる。
そしてやっとの思いで外に出ると僕は井戸に蓋をする。
より厳重に重く分厚い蓋を。
それでも彼らは僕を逃がさない。

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