自然で気障でそれでいて懐かしい

深夜suchmosとking gnuがステレオをジャックした車内彼女と二人初めての深夜ドライブに彼女の期待は膨らみ
緊張でハンドルを握る手に力が入る
他愛もない会話と沈黙が交互に車内を包む
赤信号の度に照らされる彼女の横顔
その度に見惚れてしまう
そうやっていくつもの赤信号を過ぎて行き
やがて目的地の海にに着く
彼女と砂浜をゆっくり確実に一歩ずつ進みながら
波打ち際まで来る
目の前に広がる海は満月の光を反射して
なにかしら魔力を孕んだいつもの黒い海よりも
神秘的でそんな誰にも邪魔されない二人の
沈黙の間を少し冷たい潮風が走り去っていく
そんな中月に照らされた彼女にまた見惚れ繋いだ左手に
少し力が入る彼女もまた右手に力が入り互いに顔を赤くする
そうやって波の音を聞き心の奥底にある切ない感情だとか
余計な感情をその場に捨て去り
好きという感情だけが空いた隙間を埋め尽くした
僕は気付けば涙を流していた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?