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都市計画研究ノート(2020.4〜6)

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With COVID-19の都市計画に関する論考集
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記事一覧

No.10|自転車の走行環境

 今回は趣味でもある自転車に関するノート。写真は出張中に撮影したミラノの自転車レーン。 1.私の自転車通勤 3月26日以降は一度も公共交通を利用していない。大学の授業や会議が原則オンライン化され、出張がなくなり、学外の会議も延期またはオンライン化されたため、自宅勤務中心生活を送っている。もともとCOVID-19パンデミック前から週1〜2回は自転車で通勤していたので、6月に入って週1〜2回ほど必要があって大学に行くときは、悪天候でもWORKMANの透湿レインスーツ・ストレッチ

No.9|COVID-19と都市の密度

1.CHPCレポート「ニューヨーク市における密度とCOVID-19」 ニューヨーク市の住宅やプランニング方針に関わる研究・教育に取り組む非営利団体Citizens Housing & Planning Council(CHPC)が「ニューヨーク市における密度とCOVID-19(Density & COVID-19 in NYC)」というレポートを出している。COVID-19のホットスポットになってしまったニューヨーク市を巡っては、その高い密度が問題だと短絡的に指摘する発言が見

No.8|グローバル・リスクとグリーン・プランニング

 この1ヶ月で、「気候変動影響予測・適応評価の総合的研究」(2020年度~2024年度:環境研究総合推進費S-18)の全体キッキオフ会合、グループ会合、WG会合が開催された。当然、会合は全てオンライン。私の研究室はこの大規模研究プロジェクトの一部「地域の土地利用・市街地環境への気候変動影響予測と持続的再生方針の検討と評価」を担当する。研究の会合でもCOVID-19によるライフスタイルの変化とその諸影響が話題に。そこで、今回は「グリーン・リカバリー」について書いてみたい。 1

No.7|プランナーができること

 COVID-19の影響で、都市計画審議会や計画策定委員会、その他の都市計画・まちづくりの会議も平常通りには開催されなくなった。一部の自治体はWebexやFaceTimeを使ったオンライン会議の準備を進めている。多くの会議は延期か書面開催。書面開催の場合は、資料を読み込んでコメントを作成するが、これはこれまでも欠席する会議に対してはやってきたことなので慣れている。内容によってはお断りしていた「事前説明」もなくなり、スケジュールが楽になった。ところで、日程調整をエクセル表で行う

No.6|都市の再形成

 CNNの Oscar Holland 氏の記事 "Our cities may never look the same again after the pandemic"(5月10日)は、何人かの専門家へのインタビューに基づき、パンデミック後の都市の姿について検討したもの。私なりに重要だと思ったポイントを整理してみました。 1.パンデミックは都市再形成の触媒として機能するだけ ウォーカブル都市、自動車と汚染がない都市を推進する人にとって、ここ数週間はこれまで主張してきたア

No.5|都市システム・デザイン

1.「都市システム・デザイン」の考え方 「No.3」の最後に書いた通り、計画策定と持続性評価は表裏一体である。となると、マルチスケールの計画策定と持続性評価を一体的に扱うシステムの開発が重要になる。これについては、都市の環境負荷低減・気候変動適応やスマート化の動きに対応するために、従来の都市デザインの方法とビッグデータ、AI、IoTを活用したデータ解析・シミュレーションの方法の融合を目指す「都市システム・デザイン(Urban Systems Design)」の概念提示と部分試

No.4|COVID-19と身近な空間

 No.2とNo.3では話が大きくなり過ぎたので、身近な空間(ワークスペース)について考えてみました。 1.長期化する自宅勤務 COVID-19感染拡大により、3月の約半分は自宅勤務または休み、4/3以降は郵便物等を大学に取りに行った1日を除いて自宅にいる。仕事が生活の中にすっかり馴染んでいるので、もはや仕事と休みの区別がつかない。実は、前述の「郵便物等」の「等」にはデスクトップ・パソコン一式とオフィスチェアが含まれており、長期戦に備え、自宅寝室の一角に快適なワークスペース

No.3|持続可能な都市の形態

 No.2を書いた後、もっと都市計画分野に踏み込むべきだったと思い、続きを書くこととしました。 1.分野融合型アプローチ 私が2014年4月に現職に就いて「環境負荷低減・減災に向けた都市計画、計画策定技法(方法と技術)」を研究テーマに掲げるようになったのは、前職が名古屋大学大学院環境学研究科(以下、名大環境学)(1)にあったことが大きい。2006年10月に都市計画担当の教員として着任したのは建築学コースであったが、この建築学コースは、名大環境学にある3つの専攻の1つである都

No.2|世界共通課題と「統合的空間計画」

 持続可能な開発目標(SDGs)の達成とレジリエンシーの向上が都市計画を含むプランニングの世界共通課題であるという認識を持っています。そして、こうした大きな課題に応答していくためには、狭い都市計画のマスタープランを超えて、物的環境形成に関わる複数の基本計画を統合すると良いと考えていました。このことについて、改めて整理したいと思います。 1.プランニングの世界共通課題:SDGsとレジリエンシー 2016年秋頃から、都市計画一般について書いたり話したりする際、持続可能な開発目標

No.1|COVID-19と都市計画研究

 COVID-19感染拡大の影響を受け、大学のオンライン講義・演習の準備・実施や前例のない学会委員会の運営に追われた1ヶ月でした。オンラインで研究室会議や学部4年生対象の研究室説明会も行ってきたところですが、その中で、COVID-19感染拡大によって研究のテーマや研究の進め方がどう変わるのかといった質問が学生から出てくるのは当然です。整理された回答ができないので、その時点での考えを述べ、最後は「一緒に前向きに考えていこう」とお茶を濁してZoomミーティングを終了していました。