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大学院生を「選ぶ」こと

ツイッターで、研究室に入りたいと言ってきた学生に対して、「では、私の論文を読んでコメントしてください」と返事するとほとんどいなくなる、というようなツイートをした人に対して、なんとひどいとか、よくもまあそんなエラそうなとかいうようなリプライがついて、そこそこ盛り上がっていた。「炎上」とまではいかないのかな。


この手のリプライをつけてきた人の言い分を、記憶している限り箇条書きにしてみるとこんな感じ。


・自分の論文を読めとはエラそうだ。

・論文を読むのは入学(入院)してからでよくて、まずは意欲だろ。

・こんなこと言われる学生がかわいそう。

・学生が学ぶ機会を奪っている。

・お金払ってるのに、断る権利なんかない。

etc.


えーっと。


理系と文系とで反応が違っているようでもある。理系のことは分からない。理系には理系の事情があるのだと思う。文系でも、他分野や他大学や、はたまた他人のことは分からない。だから、自分のことだけを書けば、


僕自身も、院生になりたいというメールが来た場合には次の対応のうちのどれかをとることにしている。


・無視する。

・もう少し話を聞きたいとメールを返事する。

・それでも良さそうなら、その人が書いている研究テーマに近い課題を与える。この課題は「論文を読んで何か書いてください」である。それが、たまたま僕が書いた論文を課題にすることもある。


大学院生を選抜するという業務において、これは至極穏当な手続きであるように思う。なぜならば、大学院というところは学部と違って「専門性」を問うところであるからだ。


学部の延長のイメージでやってきました、となると、一言で言うと「苦労する」。そうならないためには、入学する前の段階で、大学院はまあまあ大変ですよということ、あなたが選ぼうとしている学問は、本当にあなたに合っていますか? 合っているかどうか、事前にご自分でお調べになっていますか? そして、あなたが選ぼうとしている教員(=堤)は、それを指導できると判断していますが、本当でしょうか? 


ということを、お互いに確認し合うことは、必要な作業なのだ。


学生の学ぶ機会を奪うつもりは毛頭ない。ので、基本的に「院に来たい」という学部生がいれば歓迎する。学部生は、僕の授業も受けていて、僕が何をしているか知っていて、どういう人間かもある程度理解した上で来たいと言っているのだから。ま、来ないのだけど。


問題は、他所からやってきはる人で、まったくどのような人か知らないのに、歓迎してる場合ではないので、上記のようなことを言うことになる。


特に、外国の方の場合は、もう一つ問題があって、それはビザの問題である。こちらが「来てもいいですよ」と言うことによって、ビザがおりることになる。それは、日本という国に対してある種の責任を負うことになるし、わざわざ日本にやってきてくれるその学生にも責任を負う。呼んだけど、院に合格しなかったというのは、できれば避けたい。でも、まま起こることではある。


そういうような事情なので、ツイッターで喧々囂々賑やかなのですが、やっぱり淡々と粛々と、「僕がどんな研究しているか理解していますか?」ということは聞くだろうと思う。


あと、「無視するとは何事だ」とかあるかもしれない。昔は全部のメールに返事してたのだが、負担が大きいのだ、これ。授業料が云々と関係あるのでいっぺんに言うと、他所の学生さんからは別に授業料ももらっていない。それでその人のメールに添付された履歴書読んで、計画書見て、その上で連絡をする、ということを結構な数やっていると、本務であるところの、自分の学生の指導に差し障るのだ。


てか、そもそも、明らかに日本中の誰でもいいから、拾ってくれみたいなメールが送られてくる。「先生の研究に興味があります」とか、「受け入れてくれたら一生懸命勉強します」とか。受け入れる前から勉強してね、と思うのはいけないことだろうか?


ツイッターで問題になった元のツイートも、そこまで詳しくは書いていないが、そういうことが裏にあるのではないかと斟酌する。


建前上、大学院は学部の一つ上に位置している。学部を英語で"under"graduate, 院をgraduate というのはそういうことである。だから、教員は、応募してきている学生に対して、当該の分野で研究を遂行するに足る、最低限の基礎知識や論文を読みこなす能力を有しているかを聞くのである。

もう一つ、この件に関して言っておきたいことは、「自分が関わったことがないこと、やったことがないことに、軽々に口を挟んではならない」ということである。


続く。



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