霧の街に雨が降る

目が離せないのは何故だろう。

きみが泣くたびに、小さな虹がかかる。七色の彩りが、世界の色を思い出させてくれる。移り変わる感情のグラデーションは、まるで空模様だ。

自分のことさえ霧に隠されて、なにがしたいかすらも分からなくて。呼吸をしても肺が冷えていくばかりで。

きみの涙が降るたびに、鮮やかな感情をまざまざと見せ付けられた気になるのだ。諦めにも似た憧れが、ぼくの顔を上げさせた。

見上げた空がどこまでも自由だったから、なんだか笑えてきてしまった。吐いた息はあたたかく、いつの間にか頬には雨が伝っていた。

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