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冬支度

暑いくらいに晴れた日は、コートを洗うのに絶好の日。

ウールのショートコートを裏返して折り畳んで、洗たくネットに入れて、洗濯機の手洗いコースにお任せする。そのままだと脱水が足りないので、普通コースの脱水を軽くかける。終わったら、裏返したままハンガーにかけて、ベランダに干す。このコートはしわにならないことがわかっているので、ぽんぽんと手でたたくこともしない。あとはお日さまと風にゆだねる。

午後三時、コートはふっくらと乾いている。陽の光を抱き含めた生地は、ふっくりとやわらかくあたたかい。よく乾いた洗たくものの、お日さまの匂いがするのが、わたしは好き。そのなかでも、洗って乾いたコートはとくべつに好き。他の洗たくものよりも、ふっくりふっくらするのが、よくわかるから。

コートを表に返して、毛玉を取った。糸切りばさみで、ひとつひとつ取っていく。ショリ、ショリ、と糸切りばさみの刃がこすれる音。手に触れる布の繊維の一本一本に、新鮮であたたかい空気が、じゅうぶんに行き渡っているのがわかる。生地がゆったりとのびやかに呼吸している。

洗濯用のハンガーから、収納用のハンガーに替えて、ボタンを合わせた。やわらかくてあたたかな、わたしを包んでくれるやさしいコート。クローゼットの端にかけて、あとは出番が来る日を待つばかり。



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