イノベーション破壊と共鳴

disruption(攪乱)はdestruction(破壊)ではない。


トランジスタは真空管に対する破壊的イノベーションではなく継続的イノベーションであり、
さらにいえは、トランジスタではなくMOSFETであり、
MOSFETこそ破壊的イノベーションであった。
MOSFETより破壊的なHEMTは日本発である。

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株式時価総額の伸びと学術論文寄与度の伸び
https://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2014Papers/Yamaguchi-Innovation-141209/Yamaguchi-Innovation-141209.html
真摯な研究・開発が行われた結果、ヒット商品が生まれ、企業価値増加につながった。

研究者や技術者を増やしたり論文執筆を奨励したりした企業では、研究部門のモティベーションが上昇。それが他部門に波及して、生産性や商品開発力の増加につながった。それとは逆に、研究者や技術者のリストラを大規模に行なった企業では、研究部門のモティベーションが低下。それが開発部門や製造部門に波及し、生産性や商品開発力が低下して企業価値が下がった。

高収益を上げて企業価値を増やした企業では、その収益増を研究・開発費にふりむけ、その結果、研究者数の増加や論文数の増加につながった。いっぽう収益を上げられずに企業価値を減少させた企業では、コスト要因である研究部門のリストラを行ない、その結果、論文数が減少した。

性能持続型 性能破壊型
パラダイム破壊型    
パラダイム持続型    
クリステンセンは、「イノベーションのジレンマ」において、イノベーションを「破壊的イノベーション(性能破壊型イノベーション)」と「持続的イノベーション(性能持続型イノベーション)」と性能面から分類した。
イノベーションには、この軸とは直交する次元として、パラダイムがあり、「パラダイム破壊型イノベーション」と「パラダイム持続型イノベーション」に分類できる。

「パラダイム」とは、誰もができると思っているかどうか。

性能面のイノベーションは、「性能を引き下げる製品を市場に投入したか否か」で分類される。
パラダイム面のイノベーションは、イノベーションの生成プロセスの違い、「科学的パラダイムを破壊したか否か」、つまり「今まで科学的にできないとされてきたことを、できるようにしたか否か」で分類される。

イノベーションダイヤグラム
→守破離→守(演繹)破(帰納)離(創発)

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イノベーション・ダイヤグラム
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~future/wp-content/uploads/2015/11/2015-003_small.pdf


横軸に「知の創造(Knowledge Creation)」→研究abduction→創発、ひらめき→仮説推論(アブダクション)→CSO
縦軸に「価値の創造(Value Creation)」→開発、「知の具現化」→テクノロジ→CTO

まず、既存の技術から価値の創造(deduction、演繹)に向かう→パラダイム持続型イノベーション
いずれゆきづまる。ゆきづまったら、演繹(deduction)の逆操作、つまり、土壌(soil)まで帰納(induction)をする。
土壌の下まで降りると創発(abduction)できる。
創発ができて、別のパラダイムをつくりあげれば、そこからまた演繹をするプロセスのことを、パラダイム破壊型イノベーションと呼ぶ。
この創発のベクトルと演繹のベクトルの結節点を、共鳴場(Field of Resonance)と呼ぶ。
とにかく、アブダクティブ(abductive)な人間とディダクティ ブ(deductive)な人間が共鳴的に仕事をいっしょにする場。
この共鳴場において、暗黙知が醸成される。
共鳴場は、野中郁次郎によるSECIモデルの「場の発生」に対応する。
ただし、SECIモデルは暗黙知を形式知に変換することによって、知の創造のスパイラルが起こるが、パラダイム破壊型イノベーションの「知」は、常に原理的に形式知に変換できないタイプである。

パラダイム持続型イノベーションには、
知の創造に加えて、学問分野間のバリアを「回遊」によってまたぐ「知の越境」も重要である。

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