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深夜の電話

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深夜に電話が鳴る。それをうける小学生の少年。 ───────(設定は1970年代前半、黒電話しかない時代です)
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2014年5月の記事一覧

「深夜の電話」第10話

「それで患者さんからの電話を僕がとることになるのかよ」少年は口を尖らせながら、さらに続いた父の言葉を思い起こそうとした。が、それを遮って再び電話が鳴り出す。「はい尾上です…………」電話の向こうから、先ほどと同じ遠くのおしゃべりが聞こえる。また病院からだ!少年は身構える。……続く

「深夜の電話」第11話

「ちょっと、あんた先生どこ隠したのよ!」野太いおばさんの声がガンガンと響く。「あ、あの、どなた様でしょうか?」戸惑いつつ少年は問うた。「はーぁん?庄司よ!」尊大な口調は、私をどうして知らないのかと言わんばかりである。(あ、さっきの患者さんの関係者──たぶん母親だ!)……続く

「深夜の電話」第12話

受話器から罵声が怒涛のように噴出し始めた「あのねぇ!嘘ついて隠しても無駄なのよ。先生出しなさいよ!」「いえ、ここには居ません」「ガキのくせにふざけんじゃないわよ、いるのはわかってるのよ、出さないと承知しないからね」「出張でいないんです」「嘘おっしゃい、酷い目に遭わすよ」……続く

「深夜の電話」第13話

「あんたなんかじゃ話にならないわ!先生いないというなら母親を出しなさいよっ」少年の顔つきが変わる。“敵”が、守らねばならない防衛ラインまで来てしまったのだ。そもそも、年端も行かぬ少年がこんな深夜の電話をとるのには理由があった。尾上少年の母は病気を患っていたのだ。……続く

「深夜の電話」第14話

慢性気管支炎。そんな病名だった。死ぬような病ではないが、気温の下がる夜半から朝は声が全く出せず、喉が痛み悶え苦しむ。全く眠れないこともあるようで、翌朝にヒステリックに少年や物に八当たりするのも珍しくなかった。そんな母を単に苦しめるために起こすなど少年には許されなかった。……続く

「深夜の電話」第15話

「母は病気で出られません」決意を込め、少年が凛と答える。そんな少年の語気の変化にも気付かないのか「このガキは何をいいかげ……」と庄司の母がさらに罵ろうとするのを遮り、「この野郎、お前はお母ちゃんを殺す気くぁ」少年の震える怒声が響き渡った。……続く