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正解のない選択肢-日本ドラマ「モアザンワーズ/More Than Words」見どころ&個人的感想-

最近もドラマをちょこちょこ見てはいますが、忙しい合間をぬってブログを書こう!と思える作品に出会えず、さらさらと日々が流れていっておりました。しかしAmazonPrimeオリジナルドラマ「モアザンワーズ」を見てしまって「これは感想を残さねば!」という謎の使命感に駆られて今パソコンに向かっております。色んな感情が沸き上がって心がぐちゃぐちゃになるドラマでした。

原作者の絵津鼓先生が個人的に好きで、作品をちょっとずつ集めている途中でのこのドラマ化。今作の原作になった「モアザンワーズ」と「IN THE APARTMENT」は未読の状態で見ました。絵津鼓先生の漫画は、登場人物のどうしようもない葛藤とか、心情の深いところまで描いているものが多い印象です。分かりやすいハッピーエンドもあれば、余白を残した終わり方をするものもあり。果たしてこのドラマはどっちだろう…と視聴を開始しました。

※見どころとあらすじ、全話の感想を書いていきます。途中からお知らせした上でネタバレ入れていきます。

↓予告編はこちら

概要と視聴方法

【概要】絵津鼓作の漫画「モアザンワーズ」と「IN THE APARTMENT」が原作。発行は「IN THE APARTMENT」が先ですが、槙雄の前日譚として「モアザンワーズ」があります。
他にも「SUPER NATURAL」の主役2人の美容学校の同級生として「IN THE APARTMENT」の朝人が出ていたりと、絵津鼓先生の漫画は色んな作品とクロスオーバーしていて、そこも楽しめます!

【話数】1話約25分~約40分×10話

【視聴可能媒体】Amazon Prime Videoオリジナル作品。月500円のプライム会員であれば全話見ることができます。

あらすじ

あの青春の日々は、ときに優しく、ときに切なく、いつもはかなく輝いている――同じ高校に通う、親友だった美枝子(藤野涼子)と槙雄(青木柚)。一緒に始めたバイト先で大学生・永慈(中川大輔)と出会い、3人はつるむようになる。ある日、永慈が槙雄を好きだと言い出し、2人は結ばれる。しかし周囲が交際に反対。槙雄と永慈を引き裂こうとするなか、美枝子が彼らのために2人の子供を産むことを決意。3人の特別な関係は徐々に変化していく。そんなとき、槙雄は元同級生の朝人(兼近大樹)と偶然再会し・・・。若者たちの痛々しいほどピュアで、美しくも切ない青春群像劇。

Amazonより引用

ちょい役で出ている俳優さんが豪華!

永慈のお父さん役で佐々木蔵之介さん、朝人の兄役で斎藤工さん、美枝子のお母さん役でともさかりえさん、永慈が酔いつぶれる店の店員役で上白石萌歌さん、永慈の仕事の上司(師匠)役で大森南朋さん。日本のドラマをあまり見ない私でも知っている有名な俳優さんたちが、贅沢な使い方をされております。(佐々木蔵之介さんとともさかりえさんはがっつり本編に絡んでいるのでちょい役ではありませんが)

ドキュメンタリー日本映画を見ているような雰囲気

画面の色合いと終始長回しのカット、役者さんたちの自然な会話のやり取りも相まって、登場人物たちの日常をのぞき見している気分になるドラマです。特に美枝子役の藤本さんと、槙雄役の青木さんの掛け合いがあまりも自然すぎて、どこまでが台本にあってどこまでアドリブなの?と思ってしまうほど。

また、セリフだけでなく、間もとても大事にされている気がしました。矢継ぎ早にセリフが飛び交うわけではなく、普段の馴れ合った2人らしいテンポ感だとか、付き合い始めの2人の微妙な空気を感じる間だったりとか、グッと引き込まれる間を随所に感じられました。
特に感じたのがドライヤーのシーン!2回出てきますが、どちらもジレジレしちゃうような間があって、2人の緊張感とかがダイレクトに伝わってくるニクイ演出だわ~と見ておりました。

ナチュラルに心がえぐられる

最初の方は高校生と大学生の青春をぼーっと見ていた感じなんですが、途中から感情がぐっちゃぐちゃになって忙しかった!
常に「つらい」「腹立つ」「わかんない」「切ない」「苦しい」という感情が順番に沸き、幸せそうなシーンであればあるほど、その幸せの裏には…?という感情も浮かんできて、終始心に嵐が吹き乱れてました。

フィクションだし、自分に起きたことじゃないし、近しい人に起きたことじゃないけど、グッと物語の世界に入り込んで、登場人物たちと一緒に一喜一憂したり、自分のことのように腹が立ったり、ここまで感情がせわしなく動くドラマも珍しい!(私が比較的フラットに見てしまうからかもしれませんが)ドラマに没入させてしまう作りと、役者さんたちの演技が本当に素晴らしかったと思います。

だからこそ…!もう一度じっくり見る?と聞かれたらしんどくてみれないかもしれないな…。見終わった後は、エロ可愛いBL漫画読んで心のデトックスを行いましたもの(笑)。

もちろんBL要素はあるんですが(BoysがLoveしている話なので)2人のシーンも少ないし、主題はそこではないため、広義に愛のお話かなと思います。



↓↓↓ここからネタバレ入れていきます。

選択を間違えたのだろうか

このドラマのメインであり、きっと人によって賛否が分かれそうなのが「3人が選んだ答え」じゃないでしょうか。

ゲイである永慈と、永慈を愛した槙雄。この2人の親友としていつも一緒に過ごしていた美枝子。

一般的な家庭で愛情を注がれて育ったのが永慈。槙雄の両親は詳しく描かれてなかったですが、「俺んち放任やねん」と言ってたからそこまで愛情は注がれてなかったのかな?美枝子はほぼネグレクトに近い環境だったみたいですが、子どもが妊娠したことにはしっかり向き合っていた母親がいました。(はっきり反対はしてなかったけど、やんわりとした反対意見も言ってましたしね)

美枝子にとっては永慈と槙雄が新しい居場所になっていたのに、2人が付き合うことで「2人+1人」という寂しさを感じるようになっていきます。
ずっとこのまま2人が付き合い続けていって、変わらず自分も一緒にいれたら…それが美枝子の願いであり、もちろん永慈と槙雄も願っていたと思います。

それを壊す永慈の父親からの反対。「別れてくれ」と言ったときに父親が「子どもを持つ幸せを知って欲しい」と言ったからなのか、美枝子が2人の子どもを生むと言い出します。

ここで選択肢は3つあったはず。

①父親の言葉は無視して付き合い続ける(親とはもう会わないという覚悟も引っ越しも必要かも)
②別れる
③美枝子に子どもを生んでもらう

ここで3人が出した答えが③。いや、マジでなんで!?って私はなりましたよ。
美枝子は恋愛も結婚もしたくないと言っていたから、子どもを持つことも考えてなかったのかもしれない。自分が生むつもりないなら、この2人のために…と若さゆえに思ってしまうこともあるかもしれない。
でも不可解だったのが、永慈も槙雄もその意見に乗ってしまったこと。2人が付き合いを続けていくこと、一緒にパートナーとして生きていくことは2人の問題なんですよ。そこにいくら親友で心を許しているからと言って、第三者が介入したらダメなんですよ!冷静になって2人で話し合ったら、少しは違ったのでは?と思わずにいられなかった。

お父さんもお父さんで、なんで2人を別れさせる場に美枝子を呼んだ?もう「なんで?」がいっぱい浮かんでくる!

親友と恋人は明確な違いがあるんです。それを3人とも分かっていなかったのかな…と思う。3人で生きていくわけじゃない、最終的には2人で結論を出さなきゃ…。

美枝子が「2人+1人」の寂しさを2人の大事な場面に介入することで、一生自分が疎外者にならないように”無意識に”選んでたんだろうな、と思うと、女はやっぱり怖いと思ってしまったり。

なによりも1番しっかりしなきゃいけなかったのが永慈なんですよ!自分の父親が反対しているわけなんだから。
永慈の父親のことを槙雄も慕っているんだから、槙雄から「おっちゃんに逆らって2人で一生暮らそう」なんて言えるわけがない。槙雄の家庭事情は知らないけど、あまり温かい家庭じゃなかったのならば、永慈の家族はまぶしく映ったはず。そんなの、自分のせいで壊すようなことを言えないでしょ?槙雄が美枝子の提案にすがっちゃうのは理解できるんです。それが唯一永慈といられる手段だと思ってしまっても仕方がない。なんで永慈も乗っちゃたのかなぁ…。槙雄を愛していたのなら、2人で生きていく術をまず探さなきゃ。

子どもが欲しい」というのが発端なら、理解できることもたくさんあったと思います。それぞれの子どもを生んで、”2人が育てる”という選択肢。美枝子は代理母をするなら、手放す覚悟でいるべきだったんじゃないのかなぁ。(3人でずっと一緒にって言ってたからそんなこと思いつきもしなかっただろうけど)(日本でも子どもを望む同性カップルが養子で子どもを迎えるハードルが下がればとは思ってはいるけど、それはここではまた別の話)
でも「父親に認めてもらうため」に「子どもを利用した」ことが納得できない。

永慈の父親もさ、子どもを生んだ美枝子に「ありがとう」じゃないんだよ!違うでしょ?そうじゃないでしょ?親として、大人としてそれどうなん?とめちゃ思いました…。子どもさえできれば、それでええのか?それは永慈に子どもを持つ幸せを知って欲しいというより、自分が孫を抱く幸せを味わいたかっただけじゃないの?ってすんごい腹が立ちました。

8話の冒頭、全部が幸せそうに見えるシーンなんだけど、ひたすら私の心の中で「ムカムカ」と戦っていましたよ…。美枝子も「槙雄に戻ってきて欲しい」じゃないんだよ。槙雄がいなくなったことが、結局一番望んでいた「3人でずっと一緒に」という願いが壊れたことが、この選択をした3人への罰のような気がするのよ…。

感情が渦巻いたまま終わった

8話後半からは、ひたすら槙雄が救われることだけを祈りながら見ていたけど、美枝子の願いだけが叶って終わってなかった?

河川敷を子どもと美枝子と槙雄で手をつないで歩くシーン、もう感情が迷子ですよ!ひたすらここでもお腹が色んな感情でぐりぐりしてた気がする…。
槙雄に子どもを見てもらって、美枝子もたまには槙雄に会えるようになったのかな?私の中では、けじめをつけるというのは、もう一生会わないということだと思っていたから。

槙雄がいいならいいんだ。もう会いたくないじゃなくて、いい距離感で会えることが幸せなら。でもな~~~~私の心はすっきりしない。

・朝人の存在

槙雄は朝人と再会したことで過去の過ちと向き合うことができましたが、2人の関係はこれから!というところで終わってしまいました。どうしても槙雄に感情移入してしまうから、私にとっては物足りなさを感じたんでしょうね。(それは原作の「IN THE APARTMENT」を読んで埋めます)

恋人でもない2人の関係だけど、これからもお互いがお互いの居場所になって、癒し合える関係であって欲しいな。

朝人は言葉が優しくてやわらかくて素敵!「頑張ったな」も「いとしい」も、心がすさんでた槙雄にとっては染みたことでしょう。

兼近さんの演技どうなのかな~?って思ってたけど、すごい良かったです!!!全員のお芝居が自然な中、兼近さんの朝人も自然で、すっとドラマに入り込むことができました。
おじいちゃんの施設に行くシーンもぐっときました。朝人のシーンだけが心の安らぎだった気がする…。

ちょっと気になったこと

①ウィッグやっぱり気になる

地毛じゃないと違和感ありますねぇ…。なんかやっぱり不自然だったのが少し残念でした。

②髪を切るところを見たかった

朝人が槙雄の髪の毛を切るところを見たかった!憑き物を落とすという感じで、私ももうちょっと気持ちがさっぱりしたかもしれない…。(いや、しなかったかな笑)

【まとめ】そうは言ってもいい作品でした!

こんなに没入して、こんなに感想を言いたくなるというだけで、いいドラマだと思います。制作陣の本気、俳優陣の本気もしっかり感じられたし、見てよかったと思えるドラマです。(感想も何も出てこないドラマこそダメですから)

日々のルーティンをこなしているだけじゃ、感情がそんなに大きく揺れ動くことがないですから。私の中のあらゆる感情が湧き出て来た気がする…。

こうなったら可及的速やかに「IN THE APARTMENT」を読んて、槙雄を救い上げないと私が落ち着かない(笑)。原作でも救われてなかったらどうしよう…。槙雄を…槙雄…を…。(昨日からずっとマッキー一色ですw)つらいので、ずっと「モアザンワーズ」の原作は読めない気がするな…。

絵津鼓先生のほかの漫画も素晴らしいので、またドラマ化されるといいな!読めば読むほど味が出る「メロンの味」も好きなので、ぜひこちらもよろしくお願いします。

※トップ画像はPR TIMESから引用させていただきました。


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