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文化は、孤独に効くから。

暇があるといけない、と祖母はよく言っていた。暇があると、余計なことを考えてしまうからね。祖母は都会に住んでいたけれど、自分の手で野菜を作っていた。暇を作らないようにしているんだよ、と遠い目をして言った。

自粛期間は、本当に「暇」だった。どうでもいいことばかりが頭をよぎった。将来への不安、人間関係、今の自分を必要としてくれる人なんて誰もいないんじゃないか…

ぐるぐると悩む自分も嫌いだった。起こってもいないことを悩むのは意味がないことだけわかっていた。


そんな「暇」を埋めてくれたのが、音楽と本だった。

誰かの声が耳元でしていると、こんなに安らぐのか。メロディーと歌詞を両方追おうとすれば、自然と時間が過ぎた。孤独を埋めるにはちょうどいい。

誰かの思考をたどろうとすれば、どうしても自分の思考は後回しになった。誰かの思考に合わせて自分の思考のテーマが画された。まだ起こりもしないことへの恐怖にさいなまれずに済んだ。


文化は、孤独のためにある。

人と会わずに、特段会いたい人も思いつかずに、どうしようもなく落ち込むしかない毎日を救ってくれた。数人の友達や家族と週に何度かの連絡をとる以外には、社会との接点を持たない毎日を、それらは一方的に救ってくれた。その受動的な営みが心地よかった。そんな自粛期間だった。


そうこうしているうちに、少しずつ、それは能動的な営みに変化していった。ああ、これはあの本にあったあの記述とつながるな、この歌詞はこの思想と結びつく…頭がぐんぐん動くのが楽しかった。

この感覚を忘れたくない。インプットの機会を減らしたくない。だからね、10万円という大金を書籍と音楽に費やそうと思います。

孤独な人間を、救ってくれて、本当にありがとう。




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