30歳革命

大可愛至上主義のこの国で、三白眼で面長の私は小さい頃から顔が物凄いコンプレックスだった。

プリンセスにもアイドルにもなりたいと思えなかった。
2歳の時、保育園でお誕生日の子が着せられる、ヒラヒラの真っ白なドレスが嫌でいやで泣きじゃくったのを覚えている。そんなの似合わないのがわかっていたから。

小学校では隣の席の男の子に机をつけてもらえなかったし、中高でも青春の類にはいっさい縁がなかった。

高校を出るころ、ちょうど世の中で「ディファイン」のコンタクトが流行り始めた。卒業を機に、私もつけてみた。

世界が変わった。

男の子からも女の子からも、「可愛い人」として扱われるようになった。
もちろん美人になったわけではない。「普通」になっただけだ。
でも世界が「対等」になった気がした。

ディファインのコンタクトが外せなくなった。
でも一方で、人の目をじっくり見れなくなった。「ニセモノ」だと気づかれるのが不安だった。

20代はずっとディファインとともに生きてきた。何度もやめてみたけれど、何度もけっきょく使い始めた。
「可愛い」くなくなるのが怖かった。

けれど、変化は突然やってきた。
30歳になったとたん、なぜか「可愛くなくてもいいんじゃない」と思えてきたのだ。
三白眼の方が、かえって色っぽいんじゃないかと。

あんなに囚われていた「可愛いコンプレックス」から、すっと解放された瞬間だった。

30年間かみさまを呪うほど嫌だったのに、まさかこんな日が来るなんて。
変化というより革命という方が近いかもしれない。

生きるとはなかなか面白い。

また40歳になったら、やっぱり黒目が大きくなきゃ生きてられないと思うかもしれない。でもいまは、三白眼を魅力的にみせる方法を研究したい。

とりあえず山口百恵の画像を夜な夜な漁っている。

#コラム #エッセイ #コンプレック #かわいい #カラコン #ディファイン

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