サヨナラと声を掛けるには勇気がいる。その4

その男性は、真剣に手帳のコーナーを見ていた。
なんだろう、目についてしまったのは。
あれ?でも、この人、他のフロアのテナントの方じゃないかな。違うかな。

「いらっしゃいませ。ありがとうございます」

私が女子高生のお客様のギフトを包んでいる間にその男性はいなくなっていた。気にいるものなかったのかな。
手帳を新調するには少し遅めの2月だった。
もう少ししたら、4月始めの手帳も少し入荷するけどなぁ。

どこの人だったろう。
社員食堂ですれ違ったことがあったろうか。

今日の考え事はこの男性に持っていかれた。

すらっとした背丈に銀のフレーム眼鏡の似合う、どこの空気にも馴染んでしまいそうな人だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?