サヨナラと声を掛けるには勇気がいる その9

楽器屋で、その青いギターを見たのはもう5年も前か。
免許取り立てで、車を買えば良かったのに、なぜかギターを買った。
ギターを借りて少し弾けたことだけで、褒められた記憶が背中を押した。そんなに高くなかったし。3万円だったから、初心者にはそんなもんだろう。

ギターって不思議で弾けるだけで、何者でもない自分が何者かになれた気にさせてくれる。ギターを持ってよく出歩いたよ。公園で練習してれば、なんだか話しかけられて、絡まれたり。路上ライブという立派な呼び方は出来ないけど、そんな感じ。ハコより、ずっとずっと自由だ。

ライブハウスにはライブを見に行く専門で、やっぱり音楽が好きなのだよな。
そんなスポットが当たるような場所ではないことは重々承知だ。
一生行かずに生きていける人間がほとんどだと思っている。だけど、音楽に救われる体験をする人間だって山ほどいるんだ。
ひとつの空間の何が悪い。
そうやって遊んできたんだから。

何が悪者になる

そんな風潮が苦手だ。

あの子の悪口を言っていたのに結局くっつくのかよ。

あの時の言の葉は舞う。

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