やっぱり二丁目は最強でした!
カウンターの中に落としたものを拾って、立ち上がる際に背中を強打する。後ろにあるものは、ぎっちり並べられた鏡月ボトルの列。ゆえに、瓶の尖っているほうの殺傷能力はすさまじい。また衝撃を受けたガラスの集合体が店内に響き渡らせる音はATM強盗くらい激しく、「よく割れなかったな」と痛さにうずくまりながら思うのであります。
これ、酔っていたり、調子が悪い時などに起こる現象です。自分の車幅感覚を見失うんですかね。変わった形状のアデイのカウンターですから、あちこちぶつかったり、物を落としたりするんです。できるなら、美しく舞ってピタっと花に止まる蝶のような所作を身につけたいところなのですが、不器用に動き回るばかりの私です。
先日も、こんなことがありました。「まだ少し残ってますよ~!」と微笑みながら持ち上げた黒霧島のボトル、そのまま手が滑って床に落下させガッシャーン! まるで観客の目を引きつけた上で処刑が執行されたような、不穏な空気となりました。これは、新種の嫌がらせか? いや、まさかそんなことはしないだろう。もしやお前、サイコパスなのか? お客様の一瞬の表情からは、いろいろな感情が読み取れました。
「あ゛っ」
「……」
「割れちゃいました」
「う、うん。でしょうね……」
ごめんなさい、もうしません! お客様には丁重にお詫びの気持ちを表しつつも、我を振り返ります。やはり、いまいち調子が定まらない。この体たらく、どうしてこうなったんでしょうか?
断続的ブランクが続いたこの2年、その都度、勘を取り戻すのは一苦労でした。習慣とは強固であり、継続は頼もしいんだなあと実感します。店側の人間(僕だけ?)がこれですから、新たに定着した自宅ベースのお客様の日常を変えるのは、なかなか難しいことなのかもしれません。
休業中は、二丁目は遠きにありて思ふもの、と賑やかだった街を思い出しました。脳裏に浮かんでいたのは、なぜか「いい人そう」に笑う朗らかな面々です。しかし、営業を再開した二丁目にあったのは、そんなもんじゃ済まない人間の強力なパンチでした。ほんとバカなんじゃないかと思ったりするし(自分にもね)、イライラもする(させてもいる)。それでも、なんだか楽しい。これは郷愁じゃなく発見、進行形の感情なんです。きっとリアルでしか得られない、替えのきかない代物です。ふやけてしまった日常には劇薬かもしれませんが、来ればきっと元気になるはずです。
ボトルは、大切に取り扱いますよ。いつでもまた、遊びに来てくださいね!
Day In The Life
東京都新宿区2-13-16 藤井ビル203
二丁目文芸部
部員を募集中です。詳細はお店でおたずねください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?